ああ、なんだろうこの揉み心地は。例えるならマシュマロのような………弾力があって、柔らかくて、最高だ、

「………あの、ナマエ?」
「なにかなキャップくん」
「なんで君はさっきから僕の胸を揉んでるの」
「だってお前の胸きもちーんだもん触り心地最高」

今俺はすごい真顔だったと思う。キャップに「すごい複雑な気分だよそれ」と呆れた顔で言われてしまった。
こんなの職場だと絶対にできないことだ。キャップことキャプテンアメリカはその名の通りスーパーヒーローやってるし、俺は俺でしがないシールドの職員だ。しかも接点はあまりない。部署とか違うし。そんな俺とキャップがどうやって出会って、どうして休みの日に俺がソファに座っているキャップに馬乗りになって彼のおっぱいを揉むことができているのか、そこまでの話は話せば長いので割愛するが、とにかく俺は今幸せである。だから今日俺とキャップの休みを被らせてくれた上司に感謝することにしよう。本当にありがとう愛してる。

「ああ、本当に幸せだ…。」

キャップの胸にダイブする。彼の心音が若干速く鼓動を打っているのが聴こえて心地良い。キャップの背中に腕を回してきゅ、と抱きしめる。暖かい。

「キャップ、俺重くない?平気?」
「平気だよ。………あの、ナマエ、」
「うん?どした」

顔を上げればキャップが曇った表情をしている。少し逡巡したような素振りを見せてから、「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、」とキャップは恐る恐るといったように口を開いた。

「…ナマエは、僕の身体目当てで僕と付き合ってるのか…?」
「………………」

………俺が、キャップの身体目当てに付き合ってる?

「………………はあ?」

思わず素っ頓狂な声を出してしまった。こいつ、不安げな表情してどんなことを言うのかと思ったら………。

「…俺が、お前の身体目当てで付き合ってると思ってんの?」
「だって!っ君は毎回毎回休みの日の度に、」

「胸を触らせてくれって、言うじゃないか…」最初こそ声を張り上げたキャップだが、自分の言ってることが恥ずかしかったのか、語尾が段々と小さくなっていく。

「………………」

そう言われてよく考えてみる。今まで毎回毎回俺は休みの日に何してたんだ………?



「キャップ、胸触ってもいいか?」
「キャップ、胸触らせて」
「…触ってもいい?」
「もう無理俺キャップ不足胸触らせて」



「……………………(うそだろ)」


見事にキャップの胸を触ったことしか記憶にない…………………。
いや、他のこともしてるんだろうけど、全然記憶にない………うわあそりゃ身体目当てって思われるよな………。俺ってこんなおっぱいフェチだったんだ……知らなかった、自分でも引くわ恥ずかしい俺最低…。恥ずかしすぎて思わず顔を覆ってしまった。


「………ごめん」
「ナマエ、それってつまり」
「いや待て違うそういうことじゃない、」

慌ててキャップの言葉を遮る。まず今までのことを謝らなきゃならない。


「確かにお前の身体はおっぱいもお尻もでかいけど細腰っていう俺的にはすごいどストライクで好みだけど、」

いかん、本音が出た。こほん、と一つ咳払いをする。

「…でも俺は、お前の中身に惹かれたんだ。その、しがないモブシールド職員の俺にも優しくて、分け隔てなく接してくれるところとか、…笑顔とか、」

真っ直ぐ、不安げに揺れるキャップの瞳を見つめながら、ゆっくり言葉を慎重に選んだ。

「なんつーか、なんで好きになったのかなんて分かんないけど、気付いたらお前のこと好きだったの!だから俺は、…っなあ、どうやったらお前に信じてもらえる………?」

でもだめだ、上手く言葉に表せない。男は女と違って好きな理由を言葉に表せないと聞いたことがあるけど、まさか本当にそうだとは。今身を以て痛感している。

「…ごめんキャップ」

「でも俺は本当に、お前のこと好きなんだ。今更信じてもらえないかもしれないけど」そう言ってからキャップの背中に回していた腕を解いて立ち上がった。
俺、キャップは優しいからずっと我慢してたのに、それに気付かずに自分の都合だけ考えて、

「あー………自分が最低過ぎて引きこもりたい」
「ナマエ」

キャップの俺を引き止める声がしたけど振り向けなかった。自己嫌悪すぎてキャップの顔を見れない。


「…俺、今日はもう帰る、」
「っナマエ」
「え、っぅわ?!」

踵を返して部屋から出ようとしたら、キャップに腕を掴まれて引き止められた、と思ったらベッドに投げられた。うそだろさっき俺宙を舞ったぞさすがスーパーソルジャー。
そのまま間を置かずにキャップが俺に覆い被さる。押し倒された、というか投げられた。そんなことはどうでもいい、どうしよう顔が近い。その表情は少し怒っているように見えた。

「ナマエ、」
「ご、ごめんなさい」
「…別に僕は怒ってない。ナマエが僕のことを本当に好きでいてくれてるのは分かったよ。だから、それは、嬉しい」

「ありがとう」と小さくはにかんだキャップはすごい可愛かった。それと同時に俺は心底ホッとした。良かった、と思ったのだが、

「…ただ、少し不満があるから、この際言わせてもらう」

その後にっこりと笑ったキャップが怖い。

「え、」
「僕のことキャップって呼ぶの、やめてくれないか」
「……え?」

そんなことでいいのか、と思ったけど、俺の心を見透かしたようにキャップは「僕には重要なことなんだ」と続ける。

「……君はいつも僕のことキャップって呼ぶから、せめてプライベートの時はスティーブって呼んでくれないか、その、」

言い淀んで、そのあと「僕たち、仮にも恋人同士だし…」とぼそりと小さい声でそう言った。
「…………」

なんだろうこの天使は。可愛すぎる。

「…スティーブ」

いつもキャップと呼んでいたせいか、スティーブと呼ぶのに若干照れた。顔が熱い。けれど嬉しそうに笑うスティーブを見れたから、そんなのどうでも良くなった。こんな嬉しそうな顔を見れたなら、もっと早くスティーブって呼んでいればよかった。俺の名前を呼んで嬉しそうにちゅう、と触れるだけのキスをしたスティーブにドギマギしてしまった。普段キャプテンアメリカとしての彼を見ているだけに、そのギャップが強烈過ぎて、やばい。

「…スティーブ、スティーブ」
「…ぁ、ナマエ、…ん」

スティーブと呼ぶのが癖になってしまいそうだ。そんなことを考えながら口付ける。下唇を柔らかく食めば小さく声を上げて震えた。それが堪らなくて身体を反転させて、今度は俺がスティーブに覆い被さる態勢になる。

「ふふ、かわい、スティーブ」
「どこが、っあ、ふ、ぅン」
「全部かわいい、」
「ッん、ふぁ、…っあ、ぁ」

ちゅ、ちゅ、と何度も口付けて、スティーブが緩く唇を開けたその隙にそっと舌を差し込んだ。ディープキスを今まであまりしていなかったせいか、無抵抗に俺のされるがままになっているスティーブに支配欲が満たされる。
キスをしながら服の上からさりげなく胸をやんわりと揉む。やっぱり触り心地が良い。する、と白いTシャツの下に手を入れて、腹筋のあたりをそっとなぞるとびくりと震えた。

「スティーブ、すきだ、」
「っん、あ………僕も、」

すき、と言ったその形の良い唇を自分の口で塞いだ。口付けをし合ったまま、俺の背中にキャップの腕が回されたのが分かって嬉しい。けれど、その手がするすると下に移動していく。尻の方に到達したと思ったら手が腰の方に回って、ジーンズのボタンを手際よく外された。え、待ってスティーブ?そのまま緩くなったジーンズの下にゆっくりと手を入れられ、俺の太ももをするりと撫でてから、尻を揉まれた。なんだか変な感じがする。いや待ってくれ、俺にキスされながらやわやわと俺の尻を揉むスティーブがすごく、あの、エロい。スティーブが俺の尻を揉んでいるという事実自体がもうエロい。どうしちゃったのスティーブ。

「……スティーブ、ど、どうした」

俺の尻なんか揉んで楽しいか、と聞いたら
「ナマエこそ僕の胸を揉んで楽しいの?」と意地悪い顔で返された。ごもっともですごめんなさい。楽しいです。
スティーブが俺の尻を揉んでいるならと、白いTシャツの中に入れていた手を徐々に上の方に持っていき、直にその胸を楽しむ。ああ駄目だ、やっぱり、

「な…スティーブ、」
「っ、…なに?」
「あの、…………やっぱりお前の胸気持ちいい」
「………はあ、ナマエ………」

今度こそ呆れられてしまった。ため息までつかれた。いやだってしょうがないだろう、

「だってお前の胸触り心地が良すぎて気持ち良いんだもん………ごめんて……」

そう言ったら、スティーブに諦めたように「分かったよ、」と言われた。

「…どうぞ満足するまで存分に触ってくれ」

その言葉に俺は歓喜した。
だから調子に乗って、


「…なあ、今度お前の胸でパイズリしていい?」

って言ったけど、

「……………その言葉はなんだか知らないけど絶対に嫌だ」

見事に拒否られた。


20150902


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