19
「……」
「……」
腕の中で固まり、無言でプレゼントの山を見つめる新堂を抱きしめたまま、俺もそれ以上何を言っていいのか分からなくなってしまう。
呆れられてしまっただろうか。
それとも、ストーカー並のプレゼント攻撃と言える山に、引いてしまっただろうか。
金額的にはそれほど高価なモノは入っていないのだが、一度にこれだけのプレゼントを用意されたら俺でも引くかもしれない。
ビクビクしながら、そっと顔を覗き込んだ瞬間。
新堂は肩を震わせ、耐え切れなくなった様子で突然笑い出した。
「いくら何でも買い過ぎっしょ、どんだけクリスマス好きなんすか!」
「いや、クリスマス自体はそんなに好きでも嫌いでもないんだけど」
「すげー、嬉しいっつーか、……可愛すぎっすよ先輩!」
どうやら、困り果てた俺の顔とプレゼントの山がツボにハマったらしい。
俺の胸に顔を埋め、ひたすら笑う。
「仕方ねえだろ、イヴの夜くらいちゃんとしたプレゼントでお前を喜ばせたかったんだから」
もう、そんな事を考えている時点でとっくに恋に落ちていたのだと。
気付くのに時間はかかったけれど。
「あ……すんません。俺、飛島さんに何も用意してないっす」
まさか男二人で、本気でプレゼント交換をするとは思っていなかったんだろう。
ひとしきり笑った後でハッと気付き、突然申し訳なさそうにションボリとうなだれる可愛い後輩の頬を撫でて、俺は寄り添った身体を更に密着させた。
「俺の一番欲しかったモンは、もらったし。他には何もいらねえよ」
「うわ、そーいう事をサラッと言う」
「今更恥ずかしがる事もねえだろ、あれだけヤッといて」
「……」
程よく筋肉のついた逞しいケツと、綺麗に引き締まった腹筋。
料理上手で、いつも最後には困った顔で笑って俺を甘やかしてくれる。
可愛くて可愛くて堪らない、初めての恋人。
自然に触れ合った指と指を絡めながら、真っ赤に耳を染めた新堂が小さく呟いた。
「今年は俺も、もう一番欲しいモノをもらったから……。あのプレゼント、毎年一個ずつ贈ってもらうってのはどうっすかね」
それは、何より甘い約束の言葉だった。
来年も、再来年も。
季節が巡る度にまた訪れるクリスマスを、二人で一緒に迎えられたら。
「新堂」
「ん」
溶けそうに心地好い幸福感に包まながら、俺は熱くなった耳たぶを甘噛みして、可愛い恋人に囁いた。
「もう一発、ヤリたい」
「はっ!? もう無理っすよ俺! つか、あんだけ出しといてまだ残ってるんすか!?」
「お前が可愛いコトを言うから勃っちまったんだよ、責任取れ」
「無理ですって!」
いつもと変わらないやり取りを繰り返しつつ。
交わしたキスは、疲れを吹き飛ばして再度延長戦に突入するのに十分な程、甘く濃厚なモノだった。
恋する事に疲れても。
その笑顔で、
その声で、
何度でも、恋心をよみがえらせて欲しい。
「なあ、新堂」
「……んー……」
本当は、恋に落ちる前からずっとお前が好きだった。
囁いた声が、眠りの淵で微睡む恋人に届いていればいいと。
聖夜の星に、静かに願った。
end.
(2010.12.30)
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