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 敢えて枯寿屋に新堂を誘ったのは単に自分が枝豆を食べたかったからじゃないのかという気もしたが。
 確かに今回の件ではあの先輩に感謝しなければいけない事が多い。

 こうして新堂を抱いて寝ていられるのも、大島さんのおかげだし。新堂が意外にロマンチストらしいという情報も……。

「あ、そうだ」
「ん? 何すか、急に」
「ちょっと、そのまま待ってろよ」

 甘い時間に夢中ですっかり忘れていたある物を思い出した俺は、馴染んだ温もりが離れるのを寂しく感じながらも一旦ベッドから抜け出し、暗闇に慣れた目でペタペタと部屋の隅に向かった。

 伸びていたコードを探り、オフになっていたスイッチを入れると。

「わ……すげー」

 視界が優しい光に包まれると同時に、ベッドの上から新堂の小さな感嘆の吐息が聞こえた。

 部屋の隅に置いてあったソレは、オーロラ状に柔らかな光を放つ光ファイバータイプのホワイトツリー。
 もし二人でイヴを過ごす事が出来るなら、普段は雰囲気をぶち壊してばかりの俺もロマンチストな新堂を何とか喜ばせてみたいと、そんな気持ちでつい買ってしまった恥ずかしいまでに恋人ムードもりもりのロマンチックアイテムだった。

「すっげー綺麗ですね」
「たまにはこういうのも悪くねえだろ」
「ちょっと感動しました」

 どうやら、今夜の演出は及第点をもらえたようだ。

 ベッドに戻って再び熱い身体を抱き寄せ、額に、頬に、愛を囁く代わりのキスを落とす。

 どうして今まで、この気持ちが恋だと気付かなかったんだろう。
 身体も、心も、俺のすべてがこんなにも新堂を求めているのに。

「新堂……」

 種が尽きるほど雄の欲望をぶつけ合った後の、穏やかなキスを味わいたくて、名前を囁きながら唇を近付けた俺の顎を片手で阻止し、ツリーを見つめていた後輩が首をかしげた。

「ツリーの横のアレって何すか、先輩」
「あ……あれは!」

 部屋に入ってすぐ、電気をつける事もなく行為に突入したため、新堂が今まで気付かなかった『ツリーの横のアレ』を発見されてしまい、思わず声が上擦る。

 ムードたっぷりに輝くホワイトツリーの横には、綺麗にラッピングされた大小さまざまのプレゼントが積み上げられていた。

「まさか、女の子達にプレゼントをバラ撒くつもりで」
「違う! そんなんじゃねえ!」
「じゃあ何をそんなに慌てているんですか」

 さっきまでの甘い空気を一転させ、極寒の外よりも更に冷たい視線で睨みつけられてしまっては、ごまかせない。

 あまりに格好悪くて、本当は言いたくなかったのに。
 突き刺さる視線から目を逸らし、俯いた俺は、積み重なったプレゼントの山の正体を白状した。

「だから、……お前が一番欲しいモノを用意出来たらイヴの予定を考えてもいいって言っただろ」
「あー、言いましたね」

 今だったら、新堂が俺の言葉を待っていてくれたんだと分かるが、その時の俺はそんな事を理解しているはずもなく。

「俺、空気読めねえし、絶対お前の欲しがってもいない変なモノとか買っちまうと思ったから、色々考えて……」
「えーと……?」
「一応、お前が好きそうかなと思うモノを何個か用意して、外れてた時の保険に他にもプレゼントをって考えてたらいつの間にかあんな山に」

 そう。
 積み重なったプレゼントの山の中身は、すべて新堂のために選んだ『恥ずかしいくらいにロマンチックなモノ』だった。



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