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「で、何でこっちに戻って来るのに俺に連絡を寄越さなかったんだ」

 遅過ぎる初恋の自覚と成就に興奮して雄の獣と化した俺が、新堂を解放してやったのは、ベッド上での延長戦を終え、後始末と称して再びシャワーを浴びながら散々不埒な悪戯を仕掛けて新堂のミルクを一滴残らず搾り尽くしてからの事だった。

 もう恥ずかしがって抵抗する体力もないのか、俺の腕の中にすっぽり納まってなされるがままに髪や耳の先などを撫でさせてくれる後輩が、可愛くて可愛くて堪らない。

「つか、この大雪の中よくあんな時間に帰って来られたな」
「元々、講習の後に本社の工場見学が入る予定だったんすけど、向こうの製造部でトラブルがあったらしくて中止になって」
「それで予定より早く帰れたのか」
「本格的に荒れる前に乗れてラッキーでした」
「ふーん」

 最初から新堂がこっちに戻って来てくれるつもりだった事が分かって、嬉しいといえば嬉しいのだが。
 何だかモヤモヤするというか、腑に落ちないというか。

「じゃあお前、結構早い段階で帰ってたんだな」
「ええ。さすがに雪で遅れは出たんで、会社に顔を出した時には定時ギリギリでしたけど」
「馬鹿、定時前に帰社してたなら何で俺んトコに来ねえんだよ」

 それどころか、俺が電話を掛けるまでどこかで誰かと飲み歩きやがって。
 俺はずっと、新堂の事を考えて悶々としていたのに。

 一体どんな焦らしプレイだと言ってやりたい気持ちを抑えて、一応俺は拗ねているんだというアピールのために抱きしめる腕に力を込めて首筋に顔を埋めると、宥めるように背中を撫でながら新堂が意外な男の名前を口に出した。

「や、俺も予告なしで経理に顔出して驚かせようとか思ってたんすけど、大島主任にいきなり拉致られて飛島さんに連絡する事も出来なかったんですよ」
「大島さん?」
「枯寿屋のクリスマス限定イベント『枝豆バイキング』に付き合えって……」
「枝豆バイキング……」

 クリスマス限定イベントとしては恐ろしく地味な企画だが、枝豆好きのあの先輩なら泣いて喜びそうなイベントだ。

 というか。
 出張先での予定変更や会社に一旦顔を出す旨は当然、課に報告の電話を入れているはず。
 休憩室で俺と会った時には、既に大島さんは新堂のスケジュールを把握していたという事だ。

「くそ、また大島さんに遊ばれた!」

 悔しさを隠しきれずに舌打ちする俺の腕の中で笑って、新堂が部下思いの上司の肩を持った。

「大島主任なりに気を回してくれたんじゃないっすかね」
「ああ?」
「俺がそのまま帰ってたら、多分飛島さんからあんな言葉は聞けなかったと思うし。……何をどこまで知られてんのかは謎ですけど、俺は主任に感謝してますよ」



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