皆川工務店物語。


皆川工務店のある日。
以前皆川工務店に内装リフォームを依頼した施主の息子が来店。


「二代目、荻野さんトコの息子さんが来てますぜ」
「荻野さん…?あそこは先月終わったばかりだろうが。まさか何かトラブルか」
「そんな様子でもないんですがね。社長はもう上がっちゃったんで、対応してもらっていいっすか」
「ああ、今出る」


「久しぶりだな、浩希君」
「皆川さん!すみません、忙しいのに…」
「いや、その後住み心地はどうだ?お祖母さんの腰、少しは良くなったのか」
「はい!バリアフリーになってから家の中で動きやすくなって、腰も前みたいに痛まなくなったって。工務店の皆さんに感謝してました」
「そうか、それは良かった。…で、今日はどうしたんだ」
「あのっ」
「うん?」
「俺、工事が終わってから色々考えてて、それで……皆川さん!」
「?」
「――お父さんを俺に下さい!」
「……あ?」
「お父さんを、俺にっ」
「……浩希君。もしかして君が言っている“お父さん”ってのは、事務所裏の休憩室で寝そべって酒を飲みながらテレビを見ているあのオヤジのことか?」
「はい」
「あんなモノをもらってどうしようってんだ」
「一生大切にします!」
「もっと大切にすべきモンがあるだろ、自分の人生とか。まだ大学生なのにあんなオッサンのせいで道を踏み外すなんて親が泣くぞ」
「両親も祖母も、皆川社長ならって納得してくれました」
「……」


皆川兄貴が小さい頃に奥さんと離婚して以来独り身の親父さんにまさかのプロポーズ。
将来有望な若者が、何故あんなオッサンに…と複雑な心境の皆川兄貴なのでした。



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