嫌がらせ。


Fグループ本社社長室にて。
海老原にお茶を運んで来た伊勢崎が興味深そうにデスクを覗く。


「今日は朝から随分上機嫌だと思ったらお弁当を持参ですか、社長」
「ああ。今朝玄関先で陣内が“昼メシだ”と突き付けて来てな」
「あの外見に似合わず料理上手ですからね、陣内さんは」
「わざわざ早起きして、一体どんな弁当を作ってくれたんだか……」

口元を緩めながら蓋を開けた海老原の目に飛び込んできたのは、弁当箱いっぱいに詰められた、

……白米。

「隅から隅までご飯……かなり斬新な昼食ですね」
「あいつめ、子供じみた嫌がらせを」
「貴方がまたセクハラめいた言動で陣内さんをからかったんじゃないですか。その仕返しでしょう」
「昨日マッサージを兼ねて尻を揉んでやっただけだ。……ん? 飯の下に、何か入っているな」
「これは! アスパラの豚肉巻きに厚焼き玉子、ブロッコリーの土佐炒めと海苔佃煮……かなり豪華なおかずが隠れていますね。どれも美味しそうだ」
「嫌がらせにしても、栄養バランスの取れた食事は用意したかった訳だな。あいつらしい」
「可愛い方ですね、本当に」


海老原への地味な報復はしたいと思いつつ、手抜き弁当を作ることは陣内のプライドが許さなかったのでした。




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