福利厚生。


皆川工務店のある日。


「なあ、親父」
「あん?」
「ウチにサウナを作らねえか」
「…噂の別嬪さんをサウナで釣ろうって魂胆か」

「うわー、二代目…一途っすね」
「サウナ通いを理由にもうかれこれ5回はデートを断られてるっすからね」
「自宅にサウナの発想は凄いっす!さすが二代目!」

「普段はウチの奴らに解放すれば福利厚生の一環にもなるじゃねえかよ」
「福利厚生?難しい言葉を使えば俺が何となく折れると思ってやがるな、クソガキが」
「いや、別に難しくはねえだろ」

「福利厚生、最高っす!」
「仕事が上がった後のサウナとビール…堪らないっすね」
「おやっさん、福利厚生は重要っすよ!」

「本当にその別嬪さんとやらを落とす自信はあるんだろうな」
「…さあな。俺の方が先に落ちちまってるから、何とも言えねえ」
「情けねえ野郎だ。――おい、お前ら!皆川工務店の技術の粋を集めてサウナを作るぞ!」

「うおぉお!」
「二代目、サウナは俺らに任せて下さい!」
「世界一のロマンチックサウナを作るっす!」


二代目を応援したい気持ちと自分達が最高のサウナでまったりくつろぎたい気持ちとが結集して、敷地内に事務所が併設された皆川兄貴の実家には、史上稀に見る立派なサウナが完成したのでした。




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