ヤキモチ。


閉店間際の『KARES』にて。
珍しくグタグダに酔った様子の伍代に三上が声をかける。


「伍代さん、大丈夫ですか」
「ええ、三上さんとお話できるのが嬉しくて…少し飲み過ぎてしまったようです」
「伍代さんって、酔うと別人のようにそういう甘い言葉が出てくるんですね」
「酒の力を借りないと貴方を口説くこともできない情けない男です」
「うーん…今夜はいまだかつてない勢いで酔ってるなぁ。またこの前みたいに、朝になったら自分の言葉に身もだえすると思いますよ」
「そうかもしれません」
「そうだ、もしよかったら今夜は私の家に泊まりませんか。店のすぐ近くだから酔っていても歩ける距離ですし」
「三上さんの家に…!?」
「そんなにフラフラじゃシャワーを浴びるのも大変でしょう?手伝ってあげますよ、ふふ」
「…!!」
「酔い醒ましのコーヒー、家で一緒に飲みましょう」
「……」
「……伍代さん?」
「申し訳ありません。お誘いはありがたいのですが、文太と文也に餌をやらなくてはならないので今夜は失礼します」
「えっ!」
「美味しいお酒をご馳走さまでした」
「……」


伍代の背中を呆然と見送った三上。
キッチンの隅で気配を消して食器を洗っていた香田がぽつりと呟く。


「伍代さん帰っちゃいましたね。あの人なら絶対副店長のお誘いに乗ると思ったんですけど」
「文太と文也に餌って…」
「ものすごく可愛がってますからね、ペットの文鳥」
「文鳥に負けたのか……」
「勝つとか負けるとかいうことではない気が」
「何だか今、ものすごく焼鳥が食べたい気分になったよ」
「怖いこと言わないで下さい!ヤキモチ焼くにしてもブラック過ぎますよ!」


本当は三上の家に行くと理性を保てなくなりそうな自分が怖くてお誘いを断った伍代なのでした。



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