甘い台詞。


そして迎えた伍代の誕生日。
一人で店を訪れた伍代の前に、三上が深い琥珀色の酒が入ったグラスを置く。

「これは…?」
「私からのお祝いです。伍代さんをイメージしてカクテルを作らせて頂きました」
「三上さん…」
「お誕生日おめでとうございます、隼人さん」
「…!」
「どうぞ、飲んでみて下さい。お口に合うといいんですけど」
「ありがとうございます、いただきます」
「……」
「――美味い……」
「本当ですか?よかった」
「コーヒーの深い香りと苦味の後で、ほのかな甘味が残って…本当に美味しいです」
「伍代さんをイメージしてベースには日本酒を使ってみたんです。コーヒーも、リキュールではなく店で落としたものを使いました」
「こんなに嬉しい誕生日は初めてです」
「よかったら名前をつけていただけませんか?」
「私が、ですか」
「これは伍代さんだけのカクテルですので、是非」
「…。三上さんの下の名前を伺ってもいいですか」
「え?裕紀、ですけど」
「ユウキ…綺麗な名前だ。それにして下さい」
「カクテルの名前をですか?私の名前でいいんですか?」
「そうすれば頼む度に、貴方の名前を呼べるので…」
「伍代さん…!」


○●○


「…っていう出来事があってさ。俺はもうカウンターの隅っこで忍びのように気配を消してグラス磨くしかできなくて」
「あの無骨を絵に描いたような伍代さんにそこまで甘いセリフを言わせるなんて、さすが三上さんですね!」
「とにかく副店長が無事に美味いカクテルを作れてよかったよ。最初ビールとチョコと梅干しって聞いた時はどうなることかと…」
「三上さんの淹れたコーヒーで作るカクテルなら絶対に美味しいですもんね」
「レシピが完成するまで何回も殺人的にマズい酒の味見をさせられた俺に何らかの特別手当が支給されてもいいと思うんだよなー」


影の功労者である下っ端バーテンダー香田から苦労話と二人のロマンチックエピソードを聞かされた雪矢なのでした。



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