21


 発情スイッチが入った飛島さんは、いつも以上にフットワークが軽い。
 今まで普通にいじけていたくせに突然俺の腕を掴んで立ち上がり、ダイニングスペースから続く部屋へとまるで自分の家のように進み始めた。

「どこ、行くんですか」
「ベッド」
「ベッド!?」

 そこまで本格的な抜き合いを!?

「今日は優しくするから」
「と、とびしまさん……?」

 優しく抜き合うって一体……と思いつつ、何が何だか分からないままベッドの上に倒されて、飛島さんにマウントポジションをとられてしまう。
 酔っ払ったノリで抜き合ったあの夜とは、明らかに雰囲気が違っていた。

「いいだろ、新堂?」

 こんな体勢で“いいだろ”も何もないのに、名前を呼ぶ声の裏に、いつも自信たっぷりなこの先輩らしくない不安げな響き。
 サカリのついた駄目犬の尻尾がパタパタ揺れているのが見える気がする。

「……俺、帰ってきたばっかで風呂も入ってねぇっすよ」

 もう、一度やってしまった仲だし。あの時も嫌ではなかったし。
 抜き合い自体を拒否するつもりはない事をさりげなく伝えると、返事の代わりに、あの濃厚なキスで唇を塞がれた。

「んん、んっ!」

 ねっとり舌を絡めてデカイ身体を重ねてくる、ヤル気満々の獣。
 抜き合う事は嫌じゃなくても、洗ってもいないアレを触り合うのは嫌だという俺の意思は汲み取ってくれなかったらしい。

「……ッ、だから、風呂、入ってないって……」
「後から入ればいいだろ」
「後からも入りますけど!」
「今は無理。待てねぇ」
「!」

 熱い囁きと同時に下半身にゴリゴリ擦りつけられた飛島さんのソレは、本人の言うところの『恋心がよみがえった』状態になっていた。
 ……勃たなくなったり急に元気になったり、忙しいチンコだ。

「わ、ちょっと待っ……」
「待てねぇって言っただろ」
「んッ、あ!」

 スウェットをめくり上げた手が脇腹を滑って、そろそろと胸まで上ってくる。
 耳たぶを甘噛みしながら、探り当てた乳首を軽く指先で弾いたり転がしたりして。
 この前みたいに飛島さんのモノを握らされて、お互いに擦って終わると思っていたのに、予想外の展開に身体は硬直しっぱなしで抵抗する事も忘れてしまった。

「トビシマさ、ん、……くすぐったいですって」
「くすぐったい? 感じるんじゃなくて?」
「ッ、そこ、触り過ぎ……っ」

 男の乳首なんて触っても面白くないだろうに、そんなに熱心に弄られると何だか変な感じになってくる。

「敏感肌だな、新堂」

 敏感肌の意味が違う気がするが、突っ込みを入れられるような状態ではなかった。

「ちょっ、……あッ、あぁっ」
「イイ声。こっちもすっげえ勃ってるし」
「うぁッ」

 “こっちも”と言って硬くなったお互いのモノを擦り合わされ、スウェット越しの中途半端な刺激に我慢出来ず、自分の方から腰を突き上げて揺らすと、俺を見下ろしていたツリ気味の細い目が嬉しそうに輝いた。

「直接、触って欲しいだろ」
「うッ、んん、……っ」
「エロい顔。すげえクる」



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