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 結局俺は。隣部屋に会社の同僚なんてひたすら面倒臭いと思っていたくせに、いつの間にかあの手のかかる先輩とノリで抜き合いまで出来てしまう仲になっていて。
 しかも、飛島さんの合コン参加に若干ダメージを受けてヘコんでいるというどうしようもない状況に陥っているのだった。

 面白くない。
 今夜飛島さんが女の子をお持ち帰りしてきやがったら、イク直前まで盛り上がった瞬間を見計らって思いきり壁を蹴飛ばしてやろうか。
 アンアンギシギシ音がし始めた時点で、童謡とか演歌とかチンコが萎えそうな音楽をボリューム最大で流してやってもいいかもしれない。

 何ともショボくて虚しい報復だけど、チンコ復活のために尽力したのは俺なんだから、そのくらいの仕返しは許されるはず。

「大島主任」
「何だ」

 こんな風に、飛島さんの事ばかり考えているのはきっと。

「俺って意外に、飛島さんが好きなんですかね」
「……お前とトビとの恋愛相談なら俺は聞かないからな」
「や、そういうんじゃないんですけど」
「どういうんでもいいから、働け」

 凄みの効いた声でそう言った大島さんが、眼鏡の奥の目をピクッと引き攣らせたのが見えて、いよいよ雷が落ちそうな予感に俺は慌てて作業に戻った。


○●○


「……疲れた……」

 頑張ってはみたものの、結局作業効率は上がらず。
 帰宅出来たのは11時近くなってからだった。

 何だかんだいって本当は、あまり家に帰りたい気がしなかったというのもある。
 今までだったら飛島さんがどんなにお盛んな夜を過ごしていても「すげーな、先輩」と感心するくらいの余裕があったけど。今夜は、壁一枚隔てた向こう側であの先輩が盛っている音を聞きたくなかった。

 アレの大きさとか感触とか。オスの色気全開の熱い吐息やイク時の顔まで知ってしまっているだけに、生々し過ぎてどうにかなってしまいそうで。

「あー……今頃ヤッてんのかな」

 そのワリには静かな飛島家の様子を気にしながらカギを開けると、突然隣部屋のドアが開いた。

「トビシマさん?」

 きっとお楽しみタイムの真っ最中だと思っていた先輩が、何故かTシャツにスウェットという緩い格好で立っている。

「何やってんスか。今日、合コンだったって……」
「やっぱり駄目だった」
「はっ?」

 何が『やっぱり駄目』なのか、拗ねたように口を尖らせてペタペタと裸足のまま出てきた隣部屋の住人は、俺より先に俺の家に入って行ってしまった。



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