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 ――夢だったら、まだ救われたかもしれないんだけどな。

 残念なことに、俺の身体にはしっかりとあの時の飛島さんの手の熱さとアレの感触が残ってしまっていた。

「ああああ……何やってるんだ俺!」

 酔っ払ってたからって、男同士でキスまでして抜き合うなんて。飛島さんの生チンを触って、しかもイカされるなんて!

「おい、新堂? お前本当に大丈夫か。さっきから赤くなったり青くなったりして」
「だ、大丈夫です。すみません」
「大丈夫なら大丈夫で真面目に働けよ」
「うっす!」

 さすがにこの辺で気持ちを切り替えないと、大島主任もいつまでも笑っていないだろう。
 分かっていても、集中できないものは出来ないのだ。

 俺をこんな状態にした張本人は、今夜はどこだかの受付嬢と合コンらしい。
 チンコ復活後の久々の合コンだからか、今朝は早くから鼻歌交じりに上機嫌で出社して行く音が聞こえた。

 別に、あの先輩が誰と合コンしても関係ないし、上手い事お持ち帰りしてきたコと薄い壁一枚隔てた向こう側でアレコレ楽しむのもいつもの事だから構わない。
 それなのに、こんなに面白くない気分になってしまうのはどうしてだろう。


 ――散々俺の手で擦りまくって、俺の名前を呼びながらイッたくせに。

 面白くもない数字が並んだディスプレイに目を向けて何とか仕事の事だけを考えようとしても、モヤモヤとした感情は消し去ることが出来そうになかった。



 こんなに俺の中に飛島さんが入り込んできたのは、いつからだったのか。

 引っ越してきたばかりの時は隣に同じ職場の先輩が住んでいるなんて冗談じゃないと思ったし、初めてあの激しい夜の音を聞かされたその日には、賃貸契約の期間満了前に絶対に引っ越してやろうと本気で決意した。
 給料日前の苦しい時期に飛島さんが差し入れを持って来てくれた時も、最初は嫌々家に迎え入れたはずだった。

 ただ、一緒に飲んでみると意外に面白くて気を遣わなくてもいい先輩だという事が分かって。
 俺の手料理をいたく気に入ったらしい飛島さんが、材料と酒を差し入れする代わりに調理を俺が担当するという『交換条件』を持ち掛けてきてから、いつの間にかお互いの家を行き来して飲むのが給料日前の楽しみになっていた。

 まだこの街に慣れない俺を連れ回して買い物スポットを教えてくれたり、たまに車を出して飛島さんお気に入りのエロ本屋に連れて行ってくれたり。超ありがた迷惑なことに、全然俺の好みじゃないにも関わらずお下がりの熟女モノDVDを大量に押し付けてくれたり。

 とにかく飛島さんは面倒見がよくて、頼りになって。たまに酔っ払うと鬱陶しいけど、何かと俺の事を気にかけてくれる兄貴みたいな存在で……。



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