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――何を言い出すんだ、このガキは。

ここで抜いてみせろだと?
ヤローがそんな事をしているのを見たところで気持ち悪いだけだろうに、それで目を楽しませるという発想がそもそも俺の理解を軽く超えていた。

「どうする、安藤。…この物件で手を打って欲しいんだろう」

年の割りに妙に落ち着いた低い声で俺に決断を迫る三澤の瞳が鋭い光を放っている。
その発言が冗談ではない事を俺は即座に察知した。

「三澤様…何のおつもりですか」

これまでも物件探し中に何度か三澤のセクハラ発言的な嫌がらせを受けた事はあったが、ここまで露骨なものではなかったので大人の余裕で受け流してきた。
しかし今回は、受け流す事すら許されないような緊張感が部屋の中に立ち込めている。

「何のつもりでもない。お前が条件に従えば契約を結んでやる、それだけだ」

オナニーで契約成立って、絶対おかしいだろ!
女の子相手のこういう強引なプレイであれば、三流AVシナリオのようで俺も結構好きなシチュエーションではある。
勿論、自分が迫る方だという前提での話だが。
ただ、男同士でAVごっこはいくら何でも気味が悪過ぎた。

「あの…三澤様…」
「無駄な言葉は聞きたくない。イエスなら服を脱いでベッドの上に乗れ。ノーならそのまま帰っていい。俺は自分で迎えを呼ぶ」

何様のつもりだお前は!
思わず叫びかけたが、ギリギリのところで何とか思い止まった。

三澤は何も言わずに、射るような鋭い視線を俺に投げ掛ける。

…こんなオッサンのストリップ&オナニーショーがそんなに見たいのか。


眉目秀麗、という言葉がまさに相応しい綺麗な顔立ち。
気品のようなものすら感じる独特の雰囲気。
恵まれた身長に、スラリと長い手足。

どこから見ても完璧なこの男が何故、自分より一回り以上年上のオッサン相手にこんなセクハラ紛いの変態発言をするのか…。
何か気に入らない事があった嫌がらせなのかもしれないが、俺にはその理由に全く心当たりがなかった。


「安藤、早くしろ。俺はそんなに気が長くない」

投げ掛けられる、絶対的な響きを持った言葉。

「契約を結びたいんじゃないのか」

結びたい。

今回の結果次第では課長への早期昇進も有り得るだろう。
何よりも、早く契約を成立させてこの生意気な御曹司に振り回される生活から開放されたい。

でも、どう考えても他人が見ている前で抜くなんて無理な話だった。
男の性はデリケートなんだ。
こんなヤツの前でも平然と勃起できるようなチンポを、残念ながら俺は持ち合わせていなかった。




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