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目を覚ますと、腕の中に安藤がいた。


一瞬、欲求不満続きで夢でも見ているのかと思ったが、脳が覚醒するにしたがって、徐々に記憶が蘇ってくる。

…今朝、風邪で寝込んでいた安藤の熱っぽい身体を勢い任せに抱いたのだ。
我慢が効かなくて、つい病人に無理をさせてしまった。

「安藤」

呼びかけても、全く目を覚ます気配はない。
安らかに寝息をたてる安藤の額に頬を押し当て、少し熱が下がってきている事に安心した。

そういえば、寝る時には背中を向けていたはずの安藤の身体はいつの間にか俺の方に向き直り、背中に腕を回して、甘えるように胸に顔を埋めている。

「…お前は寝ている時が一番素直だな」

汗ばんだ髪を撫で、もっと身体が密着するように抱き寄せると、寝起きで元気になってしまった股間のモノが安藤の腰に当たったらしい。
腕の中の身体がピクッと小さく反応を示し、少し間を置いてまた寝息が聞こえてきた。

「危機感のない奴め。だから部下にケツを揉まれたりするんだ」

一人呟いて、完全に俺を信頼しきって眠る無防備な寝顔を、そっと覗いてみる。

今年で33歳になるという実際の年齢よりもずっと若く見えるのは、怒ったり笑ったり、表情がクルクル変わるからだろうか。
力強い光を持った目や直線的なラインの眉が男らしさを感じさせる、精悍な顔立ち。
今まで女にも散々モテていただろうと思うと、何となく面白くない。

忙しい仕事に追われて食生活も不規則なはずなのに、どこで鍛えているのか、キレイに締まった筋肉質の身体には無駄な贅肉などついていなかった。

程よく隆起した胸に浮かぶ褐色の突起。
これを弄れば、この男らしい顔が途端に快楽に染まり、壮絶な色気を醸し出す。
股間に息づいた大振りなモノも、どこを触れば安藤が喜ぶか、もうすっかり知り尽くしている。

「……」

まずい。
少し寝顔を眺めるだけのつもりだったのに、いつの間にか不埒な欲望が頭の中を支配しつつあった。

朝一度抜いたくらいでは全然足りないと、身体が訴えている。
かといって、風邪をひいている安藤にこれ以上の無理をさせる程、俺も鬼畜ではない。

ムラムラと沸き上がる欲望に更に頭を擡げてきた股間のモノを落ち着かせながら、そっとベッドを抜けてシャワールームで自己処理を済ませようと思ったが、背中に回された腕は意外にしっかりと身体を抱いていて、安藤を起こさずにベッドから抜ける事は難しかった。

「クソッ…」

俺がこんな葛藤の中にいる事も知らず、すやすやと眠る腕の中の男が憎い。

「…んん…」
「オイ、あまり身体を擦りつけるな」

脆い理性を試すようにギュッと身体を抱き締められて、これには少なからず動揺してしまった。

この素直さが、起きてる時にも少しは表れればいいものを…。




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