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ただもう一度会いたいと思って来てみただけなのに、何でこんな事になってしまったんだか…。

思い出したくもない恥ずかしい行為の後、腰抜け状態になった俺を軽々と抱き上げて寝室に備え付けのバスルームに入った三澤は、後始末と称してそこでまた散々不埒な悪戯をしかけて俺の身体を弄んだ。

「あのな…ハッキリ言っておくがこれは犯罪だぞ」

広い湯舟に浸かりながら、すっかり掠れてしまった声で何とかそれだけを言ってやる。
後ろから三澤に抱えられたこの体勢が甚だ不満ではあるが、もう精も根も尽き果てた俺はこれ以上の文句を言おうという気にはなれなかった。

「あれだけよがって自分で腰を振っておきながら。どの口がそんな事を言う」
「エロオヤジみてーな事を言うなっ!」

本当に腹の立つガキだ。

でも…何よりも気に入らないのは、腹立たしいはずのこの状況を意外と心地良いと思ってしまっている自分自身だった。

ちゃぷちゃぷと肩に湯をかける三澤の手がそっと触れて滑り降りていく度、くすぐったいような優しさに身体が甘く溶かされていく。
くったりと全身の力を抜き、意外と厚みのある胸にもたれ掛かってぼんやりしていると、しばらく黙っていた三澤が、やがて耳元に低く囁きかけてきた。

「安藤…お前の事を、もっと知りたい」
「だからっていきなり知られたくないようなトコから探るなよ」

普通に生活していればまず他人に知られる事のないあんな恥ずかしい場所の更に奥までじっくり検分されてしまったのだ。
その後でそんな事を言われても何と言っていいのか分からない。
後ろから回した腕に力を込めて俺を抱き寄せ、三澤は言葉を続けた。

「最初は…暇つぶしに少しお前をからかってやるつもりだったんだ」
「やっぱりそうか!」

あの公園デートは暇つぶしの嫌がらせだったわけだ。
薄々感づいてはいたが、心底性格の悪い奴だな、コイツ。

「だが一緒にいるうちに、思考モロバレのお前の胡散臭い営業スマイルがツボにハマった」
「……」
「心の中では散々悪態をついているくせに必死になって営業に徹するその姿が堪らなく可愛く思えて。どうせ手に入らないならせめて最後に身体だけでも味わってみたくて、あの日お前を無理矢理イカせた」

言葉と共に三澤の柔らかい唇が、くすぐるように軽く耳たぶに触れていく。

囁きかける甘い声とは裏腹に、何だか凄い事を言われているような気がしないでもないけれど…。
それでも俺は黙って腕に身体を預け、三澤の次の言葉を待っていた。

「…どうだ、俺はなかなかの優良物件だと思わないか。顔も頭も良くて、金もある。おまけにお前を満足させる身体とセックステクまで持っている。こんな男は他を探してもそういないぞ」
「お前それ、自分で言ってて恥ずかしくならねぇか」
「別に。事実だろう」

確かに自分で自分の事をここまで言える男は他にいない。
俺がさっきのアレに満足している事が前提になっているというのが更に凄過ぎた。
…というか、今まで生きてきて一度も男にセックステクで満足させてもらおうと思った事自体ないのだが。

立ちのぼる湯気がさっきから、のぼせそうになる程熱い。
後ろから俺を抱きしめたまま、三澤はそれ以上何も話さなくなってしまった。






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