第4話 褌プレイ。
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フロアを出てから、会計カウンターとロッカールームに続く廊下とは反対側に曲がり、奥まで進むと、俺達が「盛り部屋」と呼んでいる部屋が何部屋かある
ベッドと、その横の棚に置かれたゴムとローション、ボックスティッシュの他には何もないという凄い部屋だ。
いわゆる、そういう雰囲気になった者同士が褌のままですぐにヤれるという便利な場所なのだが、俺は恭輔さん達と興味本位で覗いてみたり、誰かが酔い潰れた時にここで休ませたりしただけで、一度も本来の目的に合った使い方をした事はなかった。
前に誰が使ったのか、後始末がキッチリされているのかも分からないし、使用する度に清掃が入るようなちゃんとした施設でもないのに、万が一ベッドに残ったモノで病気なんて伝染されたりしたら怖過ぎるからだ。
というか、褌好き同士でまったり酒を楽しみたいという仲間揃いのこの店では、盛り部屋はほとんど有効に活用されていないのかもしれない。
褌の締め方を見せるだけなら……と思って鮎川を連れて盛り部屋に入った俺は、さっきからずっと変な緊張感に包まれていた。
「……何て言うか、物凄く露骨な部屋ですね」
後ろから聞こえてきた声に、ビクッと身体が反応する。
露骨過ぎるこの部屋に、ノンケとはいえ、イイ男と二人きりでいるというこのシチュエーションに動揺しないでいるのは難しい。
「一回締めたら、終わりだからな」
「分かってます。今夜の事は忘れますよ」
悪びれもせずにそう言ってベッドに腰を掛けた鮎川は、興味津々といった様子で俺が褌を解き始めるのを待っていた。
ノンケの鮎川にとって、ただ単に褌が珍しいだけで、視線に深い意味はないと分かっていても複雑だ。
まぁ、ゲイじゃない純粋な褌愛好家もいることだし……というか、そっちの方が世間一般には多数派だろうから、これがきっかけで褌好きが一人増えるんだったら、それは嬉しいけど。
それにしても。
いくら珍しいからといって、締め方を見せて欲しいだなんて言うだろうか、普通。
よっぽど仲のイイ奴ならともかく、たまに挨拶を交わすだけの会社の警備員に。
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