すべて解かれる二十二時
※ナチュラルに過去捏造
※2.から夢主は探偵社員/一人暮らし
※なんでも許せる方向け
1.いつかの秋
「いいよね、これ」
隣に立つ乱歩の外套を軽く掴んで、すぐに自分のポケットへと手を戻す。
秋は終わりかけているけれどもまだ冬とはいえない、微妙な寒さだった。少し散歩をするくらいならちょうどいいけれど、同じ場所でずっととどまるには向かない気温。落ち葉が風に運ばれて、コンクリートをからからとなぞっていく。
「そう? 僕の住んでいたところではみんなこれだったよ。こっちに来てからは全然見ないけど。それよりさ、福沢さん遅すぎると思わない? やっぱり僕が行って、」
「だめだよ、ちゃんと待ってたら帰りに駄菓子
購ってくれるって言ってたでしょ」
今にもビルへ駆けだしそうな乱歩をなんとか引き留めて、待ち合わせの銅像の前へと引き戻した。だいぶ冷えるけれど、もう少しで帰ってくるはず。ポケットの中でぎゅっと手を握り締めて、開いて、それを何度か繰り返していくうち、指先がなんとなく熱を帯びてくる。
すぐに手足がつめたくなる私と違って、乱歩は常に温かかった。真冬に氷みたくなった私の手を「なんでこんな冷たいの?」と怪訝な顔をしながらも握ってくれたり(とはいっても彼は本当に気まぐれだから、毎回してくれるわけではなかった)、逆に夏は涼しいからとくっついてきたり。思い出す限りどの季節も結局は近くで過ごしていて、けれど私たちだって永遠に子どもみたくじゃれあっていられるわけではないのだと思うと、少し寂しくなる。
「ずっと待ってるのつまんない!ナマエなんか話して!」よく通る声があたりに響いて、感傷的になりかけていた思考がぱっと霧散する。
「ええ、急に言われてもなんも出てこないよ。寒いし」
前髪が風で舞い上がって、乾いた空気に数回目を
瞬いた。かすかに冬のにおいがする。秋に隠れた鋭さはたしかな存在感でもって、寂しさに拍車をかけてくる。
「じゃあ手、出して」
急に真剣さを含んだ声に顔を上げれば、瑞々しいグリーンがこちらを見つめていた。長いまつ毛の揺れる目は、いつ見ても魅力的。乱歩がこの先大人の男のひとへと変わっていって、そうして今みたいに見つめたら、好きにならないひとなんていないんじゃないかというくらい。飛びぬけた頭の良さも色気のある声も整った顔立ちも、乱歩の素敵なところは挙げきれないくらいにある。いまはまだ、ありあまる無邪気さだとか発言の無神経さだとかのほうが目立ってしまって、皆が気づいていないだけ。……ふたりとも子どもでなくなったら、大人になってしまったら。彼は私に見向きもしなくなって、一緒にいてくれなくなるのかな。
「ねえ聞いてた? はやく出してってば!」
「ご、ごめん」
ちいさく謝って、両手を差し出す。外気に触れたそばからさらに、温度が失われていく。彼の長い指が私の手をすっかり覆ってしまうのをぼんやり眺めていると、「つめた!」とやや大げさなクレームが飛んできて、笑いが洩れる。「いいよ、離しても。乱歩の手まで冷たくなっちゃったら困るでしょ」
絡められた指をほどいて、ゆっくり手を離す。乱歩があからさまにため息をつくものだから、無意識に首を傾げてしまった。特に不機嫌になるようなことはしていないはず。あ、もしかして気遣いを
無下にされたから? ……でも、乱歩が身体を冷やして風邪をひいてしまったらと思うと、もう一度頼む気にはなれない。
数秒考えて、ひらめく。少々不格好かもしれないし、福沢さんが戻ってきたら何をしている、なんて不審がられそうだけれど。
「ちょっと後ろ向いてて」
「なんで」
「いいから。もう寒くて手とれちゃいそうなの」
しぶしぶ後ろを向いた乱歩は、退屈そうに街の様子を眺めている。一歩近づいて、真っ黒な外套を捲った。なんだかお店の
暖簾をくぐっているみたいだ。彼はちらとこちらを見ただけで、何も言ってこない。そのまま背中に手のひらをくっ付ける。「これだったら、大丈夫でしょ」
「確かに冷たくはないけど。でもこの変なカッコ、いつまで続けるわけ?」
「……乱歩って周りの目とか、気にしないと思ってた」
「僕は気にしないけど。でもナマエは違うでしょ」
驚きで一瞬、時間が止まるような感覚がした。実際止まったのは周りじゃなくて私だし、固まっていたのだってほんの一、二秒にも満たない時間なんだろうけれど。
私がどう思うか、なんて考えが彼のなかにあるんだってことがうれしくて、でも同時に大人になるということを目の当たりにしたような気持にもなってしまう。ずっと子どもでいてほしい、とかそういうことでは決してないけれど、かといってひとりで大人になって遠くに行かれてしまうのは絶対に嫌だった。私も彼もずっとこのまま、子どもでいられたらいいのに。
「そう、かもしれない。でも今はいいの。このままがいい」
「ふうん」
ならいいけど、と続けた彼は、変わらず私に熱を分けてくれていた。腕を伸ばしていた隙間ぶんだけ距離を詰めて、表情をのぞき込んでみる。
「なに」
「なんもない。ちょっと見ただけじゃん」
手のひらに伝わった温度が爪のさきまで流れ込んで、満足に動かせなかった指は自由を取り戻しつつあった。右手の人差し指を立てて、平仮名で名前を書いていく。
「何だか、付き合いたてのカップルみたい」
始めたのは自分だけれど、なんだかおかしくなってしまって、ふふと笑う。こうなったらどこまでもカップルらしく、だいすき、とか書いてしまおうかしら。さっきから何も言わないし。
「……僕も」
だいすき、のだい、まで書いたところで思いがけない返答がきて、おもいきり後退る。当然ながら手は離れてしまって、胸の上あたりをさまよう。
「びっくりした。急にそういうの、やめてよ」
乱歩がなにか言いかけたところで福沢さんの姿が見えて、あ、と声が零れ落ちた。彼もすぐに気がついたようで、ぱっと表情が明るくなる。そのまま勢いよく走っていくところまで想像していたのに、なかなか動かない。
どうしたの、と喉元まで出かけた時、乱歩が私の手を取って駆けだす。
2.現在/冬
「遅くまでありがと。いつもは寝てる時間なのに」
夜景のなか、歩きなれた道をゆっくり進んでいく。ポケットのない上着を着てきたのは失敗だった。お店を出てからずっと、手が冷たくて仕方がない。あからさまに擦ったりはできないし、もうそろそろ感覚がなくなってしまいそう。
「別に、九時に寝るって決めてるわけじゃないから。だいたいそれくらいってだけ」
「うんまあ、それはわかってるんだけど」
探偵社の飲み会は今回も大盛り上がりで、気付けば二次会、時刻は二十一時半を回っていた。誰かに送って貰うのも申し訳ないし、今日はいつもより飲みすぎてしまったのもあって、一人で歩きながら夜風に当たりたい気分だった。お酒が入るとどうも寂しくなったり皆に感謝したくなったり、……いまのところ迷惑をかけるような酔い方はしていないつもりだけれど、更に飲んでしまえば、どうなるか分からない。弱くはないけどきっと強くもない、というのが私のお酒に関する自己分析の結果。
普段はさっさと帰ってしまう乱歩が私と一緒に帰ると言い出したのは皆が三次会を企画したりタクシーの手配をしたりしている頃で、それはそれは注目を浴びることとなった。仲が良くないわけでも、珍しい組み合わせというわけでもない。乱歩が誰かを送っていくなんて(私たちの家の方向はとても同じとはいえない)、ましてや幼馴染のような存在の私を突然女扱いするなんて、という衝撃。
私と乱歩に限って、このあと何かそういうこと、が起きるとは誰も思っていないのだろうけれど、言われた私自身だって驚いていた。道の分からない乱歩を私が送ることはあっても、逆に送ってもらうだなんて。
冬の夜の空気はどこまでも澄み渡っていて、けれど身体に入ってきた途端、やわく刺されるようなとげとげしさも伴っている。勢いよく吸い込むと、鼻の奥がつんと痛んだ。白い息が雲みたく広がるのを目で追う。雲が消える間際に、遠くに見えるビル街のまるい光たちと、濃い紫に散る星が透けて見えた。
「酔うと全部がきらきらしてみえる気がするの。もう大分、冷めてきちゃったけど。……乱歩もお酒、飲めばいいのに」
素面の時より随分饒舌な自分の声を、
靄がかった意識の中で他人事のように聞いている。この感覚は結構好きだ。ちゃんと覚えているし、考えて話しているのには変わりないけれど、でもどこか現実ではないみたい。世界がきらきらとふわふわしかない、抽象的なものになる。
「僕はいい」
「ええ、でもコンビニにさ、ラムネ味のお酒とか売ってるんだよ。今度一緒に、」
飲まない? と言いかけて、やめた。もう昔とは違う。乱歩は私だけの友だちではなくなってしまったし、だから私は他の人と恋愛もして、ずっと大人になったのだ。二人で飲んだりしたらきっと、何もかも戻れなくなってしまう気がする。
立ち止まって、数歩先を行く彼の背中をながめてみる。あのときより、少しだけ身長が伸びた。服装が探偵らしくなって、言動もほんの僅か落ち着いたりして、私の知らないところだって行ってしまう。乱歩はもう、皆の乱歩さん、なのだから。
「なにしてんの、……一緒に来てくれないと道わかんないじゃん」
私が隣に居ないことに気がついたらしい彼が足を止めて、言う。振り向きはせず、前を向いたままだ。そんなに大きな声ではないのに、少し離れたここまで綺麗に聞こえてくる。
「ごめん」アルコールが入ると途端に感情が大きくなる。それがお酒の良いところでもあり、悪いところでもある。そして今は多分、悪いところ、が出ていた。空も星も街灯も乱歩も全部、滲んでいる。「でもちょっとそのままでいて」
駆け寄って、えい、と茶色の外套を捲ってみる。いつかの私たちが脳裏を過った。背中へ手を伸ばそうとして、方向転換。これくらいしたって許される間柄であってほしい。ありますように。
「酔っ払いすぎ」
「ふふ、でも良いでしょ。……こんな機会もう無いかも」
彼のお腹に回した腕をぎゅっと引き寄せて、背中に額をつける。こんな風に後ろから抱きしめたことなんて、今まで一度もなかった。かといって、正面から抱き合ったことも無いのだけれど。
「ずっと好きだよ」もう冬の空気なんて身体に残っていないのに、鼻の奥が熱い。「ずいぶん、遠くなっちゃった気がするけど。でも変わらないの。私ね、たとえ乱歩が異能力を使えなくたって、ただのちょっとわがままな二十六歳だったとしても」
乱歩が自分に自信を持っているのは知っている。そんなのずっと見てきた。それから、皆に信頼されていてそれを誇りに思っているのも知っている。それも見てきた。でももし、いつか、彼が自分に関する真実に気がついたとき、抱えきれないくらいの重荷を背負ったとき、どうしようもならない事実に打ちのめされたとき。そんなときに、私のことを思い出してくれたらいいな、と思った。幼なじみによる、勢いだけのただのお節介だ。日本を、いや世界を代表する頭脳の持ち主に、こんな言葉必要ない。必要ないけれど、言いたかった。「それでも好きだからね」
「…………なにそれ」
笑い混じりの楽しげな声色は、いまも少年みたいな彼をもっと幼く見せた。一瞬だけ手が重なって、そっと引き剥がされる。名残惜しい気持ちに蓋をして、身体を離した。
何事も無かったかのように、乱歩が歩き出す。早足で追いかけて隣に並ぶと、さっきよりも距離が近くて手の甲が触れる。
「今日、泊まるから」
「え、どこに」
「はぁ? ナマエの家以外、どこだって言うのさ」
歩く度何度もぶつかっていた左手は突如、なんの脈絡もなく彼に掠め取られてしまった。今日は何か特別。そんな気がする。昔に戻ったみたいだ。
「急すぎてびっくりするんだけれど。もうお互いいい大人なんだから、簡単に泊まったりするの、良くない」
「だって僕、ナマエの家から自分の家まで帰れないし」
なんだそういうことか、期待して損した。深いため息をついて、ハッとする。──期待? この期に及んで。……何を。
「あ、さっきの話の続きなんだけどね」なんとか意識を逸らそうと、繋がった手を揺らす。「あの好きは特別な意味、無いから」
だから大丈夫。私が乱歩の人生に入り込むことなんてない。この先もずっと同僚として、友達として、そばに居るから。
「僕に嘘ついてどうすんの」
「……どうするんだろね」
目線は合わない。ふたりしてもうずっと、遠くを見つめている。耳に届くのは、ヒールの高い音と革靴の固い音、それから風の音。車の走る音や街の喧騒は、切り取られてしまったみたいに聞こえなかった。
だいすき、なんてことばを簡単に伝えて、笑いあってたあの秋の終わりには、理由がなくても手を繋いで走ってたあのときには、もう戻れない。大人なんて皆──と言って社長を困らせていたその乱歩が大人になって、私も子どもではいられなくなって。そうして全部、変わっていくのだ。私たちも、街も、世界も。
無言のままアパートの前まで来てしまって、気まずさが漂う。もっとも意識しているのは私だけで、乱歩は平気そうにしているけれど。左手は相変わらず繋がったままだ。ここに来る間に随分乱歩の体温がうつって、時折吹く夜風が心地よく感じられるほどだった。
鍵を差し込んで回す。朝家を出て鍵を締めた時は、こんなことになるなんて想像もしていなかった。久しぶりの飲み会、早めに帰って明日のゴミ出しの準備をしなくっちゃ──だいたい、こんな感じのことを考えていたはず。
ひとが出入りする音というのは存外響くものであるということを十分意識して、静かにドアノブを下げた。そして声を潜めて、どうぞ、と短く告げる。左手がするりと解けて、乱歩が玄関へと入っていく。私もそれを追って、後ろ手にドアを閉めた。
ふたりとも靴を脱ぎ終え、一列のままリビングへ向かう。テーブルの上のアイシャドウパレットも、無くなりかけのティッシュも、ソファに掛けられたお気に入りの毛布も、数十時間前と何一つ変わっていない。正面の窓からは青白い月あかりがうっすらとおりている。静かな輝きはひとけのない湖畔を思わせた。微細なほこりが舞っているのが見え、今朝も掃除したのにな、と心の中でひとりごちる。
ソファへカバンとコートを放る。それからすぐ近くにあるクロゼットを開けて、何もかかっていないハンガーを取りだした。そのまま乱歩へ渡す。彼はおとなしく上着を脱ぎ、やや雑にハンガーへと掛け、私へ返してくる。肩のところを合わせたり捲れ上がった袖を直したりして、クロゼットへしまった。ふう、と一息ついて振り向けばすぐそこに乱歩の顔があって、驚く間も無く抱きしめられる。勢いが良かったものだから、肩口に思い切り額をぶつけてしまったけれど(乱歩も痛かったと思う)、そんなこと、とても言い出せる雰囲気ではない。これは友だち同士のふざけた抱擁なんかではなくって、きっと。
腕を彼の背中へと回して抱き締め返したあと、おそるおそる顔を上げる。直ぐに拒絶してしまいたかったけれど、そんなの無理に決まっていた。すっかり酔いの覚めてしまった目で見た彼は、されど未だに、抽象的なきらきらを纏っている。思考は完全に素面なのに、私の世界は恋に染まっていた。めまいがする。
「だめだよ、乱歩」一歩、二歩と後ろへ下がる。背中に触れた壁がつめたい。コートのポケットから、鍵が滑り落ちる。直後、カシャンと高い音がする。
「僕のこと好きなんだろ」
好きだと叫び出したかった。でも怖かった。関係を壊すのも、皆のものになった乱歩が私だけを見つめることも、その先に待っているかもしれない別れも、すべて。ついさっき発した二文字なのに、全然違う言葉みたいだ。「言えない」
「何で」月明かりだけが私達を照らすなか、鈍く光るグリーンは恐ろしいほどうつくしい。
「……怖いから。だってもうずっと怖くて、さびしい」
「寂しい? ナマエのとなりにはずっと、僕がいるじゃないか」福沢さんだって、皆だって。続ける彼はどんな光より
眩くて、遠い。
「居てくれなくなるかもしれないじゃん。今の幸せなんて、いつ無くなるかわからない」
温かい雫が目尻から溢れて、落ちる。彼が私の方へと近付いて、優しく頬を撫でた。動作の節々まで彼らしくなくて、それが余計に涙を誘った。
「そんなつまんないこと考えてるのだって、僕には全部分かってた」
彼の瞳に映った自分は、酷い顔をしていた。床に目線をやって、これ以上見えないようにする。
「その上で、聞いてる」
柔らかくて純粋で、いつまでも耳を傾けていたくなるような、少年の声。「……すき」
「うん。知ってる」
彼は大人と子ども、どちらにも揺らぐことの無い完璧な笑みを浮かべていた。この世の何より清らかで、純真で、うつくしいひと。
両肩に手が置かれる。背中が壁に付いた状況では、ほとんど身動きが取れなかった。更なることばの代わりに、目を瞑る。
「ナマエ、」瞼のうら側がすんと暗くなって、すぐに唇に熱があたる感覚がした。息の続かなくなるぎりぎりの、長いキス。一瞬だけ離れて、見つめ合う。私たちはどこまでもおとなだった。角度を変えて何度も何度も、キスがおりてくる。触れられなかった今までを一気に埋めるみたいに抱き合って、お互いの輪郭をなぞった。そうしてまた、溶けてしまいそうな口付けを交わす。
「……だいすき」
瞳には私しか映っていない。またひとつ、涙がこぼれる。
「僕も」
乱歩のこんな顔は初めてだった。眉も
眥もなだらかに下がって、口許には薄い微笑。少年じみた笑顔の面影はどこにもない。色香の漂う男のひとそのものだった。きゅっと胸が詰まって、喉が痛んだ。
彼の頬へ手を伸ばす。どこへ触れても、彼は温かい。翠の瞳が柔く細められて、ながい睫毛の影が落ちる。
「好きだ」
普段は口数の多い彼のしずかな一言が、この部屋を、私をいっぱいにする。息がうまく吸えなくなるくらいのはげしいときめき。自分の根幹が揺らぐ感覚。後戻りのできない深い沼に、引きずり込まれる。いままでの私の知る乱歩も、皆が知る乱歩も、ここには居ない。幼いふたりは冬の夜に攫われて、月明かりに消えた。
彼の指が首筋にかかる。こんなこと、今までにもあったのに。他の人にされるのとは違う、縁取られていくような、不思議な感じがした。瞼を下ろして、彼ごと景色を切り取る。暗転した視界に青い部屋と乱歩が浮かぶ。それから、あのときのふたりが笑いあって、駆けていった。