好きなんかじゃない!!


「名前ー!おはよーっ!今日も朝から可愛いねーっ!」
「…ハンジ、いつも言ってるけどこういうの何て言うか知ってる?」
「もちろん知ってるよ!私と名前のスキンシップだよね!?」
「じゃなくてセクハラだからぁー!!」


これが私とハンジの毎朝の会話だ。
ハンジは毎朝、私を見つけると所構わず抱きついてくる。
一部の団員の中には私とハンジが恋人同士だと思っている人もいるみたいだけど、絶対に違いますから!
私はあんな変態好きじゃない!


そりゃあ、たまに本当にたまにハンジが朝から絡んで来なかったらちょっと寂しいとか思う日もあるけど、これは恋とは違う!断じて違う!




何とかハンジを撒いてやって来た食堂でリヴァイの姿を発見した。


「リヴァイおはよー。」
「名前、朝からお前とクソ眼鏡がうるさくて目が覚めた。もう少し静かにしろ。」
「ええっ!?それはごめん。でもうるさいのは私じゃなくて、ハンジでしょ?」
「…いや、お前の声もかなりうるせぇ。」


眉間に皺を寄せて言われると、言い返す言葉が思い浮かばない。
ハンジがあんなことして来なかったら私だって騒いだりしないのに…。


「何か文句あんのか。口とがってんぞ。」
「いいえ、文句などありません。本当にすみませんでした。」
「…なら良い。」


ハンジのせいでリヴァイにまで怒られてしまった。
次に抱きついてきたらはっきり言ってやる!からかうのはもう止めてって!






食堂からの帰りに、前からハンジが歩いて来るのが見えた。
私に気付いたハンジはいつもの様に走りながらこっちに向かってきた。


「名前ー!!」


(絶好のチャンス!はっきり言ってやる!)


「ハンジ聞いて!」
「な、なに?どうしたの名前?」


私のいつもとは違った様子に驚くハンジ。
不安そうに私の顔を覗き込んでくる。


「…あのね、もうこうやって抱きついてきたり可愛いとか好きとか言ってからかわないで。私だって子供じゃないんだから。」
「…え?もしかして私の気持ち全く伝わってなかったの?」



ハンジが信じられないといった顔で私を見てくるけど、私だって状況がよく分からない。ハンジの気持ちって何?ずっと私をからかってたんじゃなかったの?
困惑していると、ハンジが私の両肩に手を置いて口を開いた。



「もう名前は本当に鈍いんだから。私は冗談で好きだなんて言わないよ。いつも言ってることは本心だし、名前が私のことを好きになってくれるまで諦めないからね。」
「な、何言って…」
「大好きだよ名前。」


ハンジはそのまま私の頬にちゅっと軽いキスを落とした。
「じゃあそういう事で私はこれからも名前とのスキンシップ止めないからねー。」
「えっ、ちょっハンジっ…!」



ハンジはそれだけ言い残して私の言葉も聞かずにどこかに行ってしまった。
1人取り残された私は、ハンジの唇が触れた頬に手を当てたままその場から動けずにいた。
肩も頬もハンジに触れられた所の全部が熱かった。


「…じゃない、私はあんな変態好きなんかじゃないっ。」




胸の高鳴りをごまかす様に、私は何度も1人で呟いた。


 
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