ラブレターの行方


「名前、お前さっきから何書いてんだ。」
「何って…ラブレターだよ。」


その日、私は頭を抱えながら必死に書いていた。大好きなエルヴィン宛てに想いを込めたラブレターを。


「んなもん部屋で書けよ。何で食堂で書いてんだ。」
「だって、今部屋が散らかってて集中できないんだもん。」
「…掃除しやがれ。」


リヴァイは怖ーい顔で見てくるけど、だって最近忙しくて掃除する時間も無かったんだもん。仕方ないじゃない。
リヴァイと話していると、食堂にハンジが入ってくるのが見えた。


(まずいっ!)


「おいハンジ。名前がラブレター書いてんぞ。」
「ちょっと!リヴァイ!」
「えっ!?名前!ついに私の気持ちが通じたの!?ねぇそうなんでしょ!?」


やっぱりこうなったぁ。ハンジは私のことが好きらしい。もう今まで何回好きって言われたか分からない。でも、私が好きなのはずっと変わらずエルヴィンで…。


「これはエルヴィンに渡すラブレターなの!」
「…え。…エルヴィンに…?」
「そう。エルヴィンに。」


私の言葉を聞いたハンジは一瞬ピタッと静かになったかと思うと、またすぐに騒ぎ出した。


「そんな…エルヴィン宛てのラブレターなんて!こうしてやるっ!」
「ええっ!?ちょっとハンジ!?」


信じられないことに、ハンジは私の書きかけのラブレターをぐしゃぐしゃに丸めて自分の口に放り込んだ。


「うそっ!?」
「馬鹿だな。」


もぐもぐと口を大きく動かしてるハンジ。もう何回、エルヴィンへの告白を阻止されてきたんだろう。


「ハンジの馬鹿っ!」


しばらくそうした後、さすがに口に入れているのが苦しくなったのか、ハンジは私の、書きかけのラブレターだった物を口から出した。もうヨダレでべとべとで触ることもできない状態だ。


「きったねぇな。俺はもう寝る。」


リヴァイは不快な物を見せられて、不機嫌な顔で食堂を去ってしまった。ほんとに汚い。こんなのもちろんエルヴィンに渡せないし、もう途中まで何て書いたのかさえも思い出せない。
こんな事をしでかした本人は、むせ込んで苦しそうにしている。天罰が下ったに違いない。


「…ゲホッゴホッ!」
「悪い事するからでしょ。」
「名前がっ…ゲホッ…キスしてくれたらっ…な、おるっ。」

この後に及んでまだそんな事を言うなんて。


「厚かましい!」


でも、目に涙を浮かべて咳き込んでいる姿はちょっと可哀想だから、背中をさすってあげることにした。


「もう懲りたでしょ。これからはこんな事はしないように。」
「…ゲホッ…何度でも…するよ。名前が私を…好きになって…くれるまで。」


ハンジが真面目な顔でそんな事を言うから、少しドキっとして私は思わず目を逸らしてしまった。


(そんな事言われても…。)


「私は…諦めないよ。名前。」


ハンジはそう言うと、私の頬に手を添えおでこにキスを1つ落としてから食堂を去った。



ラブレターの行方が分からなくなりそうな、そんな夜。

 
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