気付かれないように


今日も私は気付かれないように目で追っている。密かに想いを寄せるあの人を。
その人は調査兵団の兵士長で、人類最強って呼ばれてて、私より年上で、言葉遣いが悪くて、でも本当はとっても優しい人。

そんなリヴァイ兵長は女子からも男子からもよくモテる。私の1つ上の先輩であるオルオさんもペトラさんも、熱狂的な兵長ファンだし。他の女の子達みたいに積極的に兵長とお話したりしてみたいけど、そんな勇気私にはこれっぽっちもない。


「はぁ。私ってやっぱりダメだな。」
「何がダメなんだ名前。」


すぐ後ろから聞こえたその声は、さっきまで私が窓から目で追っていた大好きな人の声。


「リ、リヴァイ兵長!?どうしてここに!?」
「通りかかったらお前がぼーっと窓の外を見てるのが目に入った。何か悩み事か?」


こうやって私みたいな兵士にも声をかけてくれるリヴァイ兵長はやっぱり優しい人だ。でも、この悩みは兵長には言えない。だから私は普段から思っていた別の、ある不安を兵長に聞いてもらうことにした。


「ありがとうございます。私、調査兵団に入って3年目なんですけどちゃんとやれてるのかなっていうか、少しでも役に立ててるのかなって不安になる時があるんです…。」
「…名前。討伐数19体、討伐補佐数62体。3年目でこれだけやってりゃ充分だろ。」
「そうなんですかね。どれだけ巨人を倒しても、やっぱり救えなかった仲間の方が圧倒的に多いですしね。」


正直、兵長が私の討伐数まで知ってくれているなんてびっくりした。こんな嬉しいことってあるんだ。


「救えなかった奴らの分まで名前、お前は生きろ。それしかねぇだろ。」
「…はい。そうですね。精一杯生きて、1日でも長く人類の為に働きます。」


私の言葉を聞くと兵長はぽんっと私の頭に、思っていたよりも大きなその手を乗せた。突然のことに心臓がドキっと跳ねる。きっと今、私はすごく赤い顔をしていると思う。


「お前自身の為にもな。」


そう言って去って行った兵長の後ろ姿を私はいつまでも見つめていた。
兵長の声や手の感触を思い出しては、気持ちが宙にふわふわと浮くようだった。自分の中に芽生えたこの初めての感情を大切にしたい。

私はやっぱりリヴァイ兵長が大好きです。


 
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