世界中の謎より


「ハンジ分隊長!好きです!」
「ありがとう。私も名前が好きだよ。可愛い部下だからね。」

にっこり微笑みながらハンジ分隊長は言った。


「ですよねー!部下としてですよね!」
「うん。それより聞いてよ名前!ソニーとビーンがね!…」


一瞬ドキっとした私がバカでした。もう何十回目になるか分からない玉砕に、私は肩を落とした。そんな私をよそにハンジ分隊長は、この前生け捕りにした2体の巨人について語り続けている。まぁ、返ってくる答えは予想できてたけどね。もう振られるのにも慣れっこです。


「そうだ!ハンジ分隊長、私モブリットさんに呼ばれてたんです。ちょっと行ってきますね。」
「モブリットに?同じ班なのにわざわざ呼び出すなんて不思議だね。」
「そうですよね。何かあったんでしょうか?…とりあえず行ってきますね。」
「ふーん。分かった。」


何かあった時の為に行き先を告げて私は部屋を出た。モブリットさん待ってるかなぁ。


本部内の待ち合わせ場所に着くと、モブリットさんはもうそこに居た。


「ごめんなさい。待たせちゃいましたよね?」
「ううん。それより名前ちゃん、最近ハンジ分隊長とはどうなの?」


何の話かと思えば、モブリットさんが切り出したのはハンジ分隊長のことだった。私の気持ちを知っているから、振られてばかりなことを心配してくれたのかも知れない。


「いや、もう全然ダメですよ。さっきも盛大に振られましたし。あはは…。」
「だったら名前ちゃん!俺と付き合ってよ!俺だったら名前ちゃんにそんな悲しい顔させないよ!」


モブリットさんの唐突な発言に私はかなり戸惑った。今まで何度もハンジ分隊長についてのことを相談に乗ってくれていたモブリットさんに、そんな事を言われるなんてまさに青天の霹靂だ。


「え…?モブリットさんいきなりどうしたんで…」
「いきなりじゃないよ。俺はずっと名前ちゃんが好きだった。」


その真剣な表情に、決して冗談とかではなく本気で言ってくれているんだと思った。
でも、やっぱり私が好きなのは何度振られてもハンジ分隊長だからモブリットさんの気持ちには応えられない。
その事を告げようと思い口を開こうとした瞬間、後ろから誰かに抱きしめられた。


「ダメだよモブリット。名前が好きなのは私なんだから。」


上から降ってきた声で、すぐにその人物の正体が分かった。私はこの声だけは絶対に間違えない。


「ハンジ分隊長!どうしてここに…。」
「名前ちゃん。やっぱり俺との事は考えられないかな?」


ハンジ分隊長のいきなりの登場に驚きながらも、モブリットさんは私にそう問いかけた。


「…はい。ごめんなさい。私はやっぱりハンジ分隊長が好きです。」
「そっか。ありがとう。…ハンジ分隊長、俺ちょっと泣いてから部屋に戻ります。」
「うん分かった。じゃあ先に戻るよ名前。」


そう言ってハンジ分隊長は足早に歩き出した。この人はどうしてあんな事を言ったんだろう。私のことはただの部下だっていつも言ってるくせに。
モブリットさんの姿が見えなくなってから、私は少し前を歩くハンジ分隊長の腕を掴んだ。


「どうしてあんなこと言ったんですか?私はただの部下なんですよね?」
「…さぁ。どうしてだろうね。」


ハンジ分隊長が大真面目にそんなことを言うもんだから、私はその場に立ち尽くした。どうしてか分からないんだったら、期待させるようなことしないで下さいよ!


「ただ、名前が他の男に言い寄られてるのが何かちょっと不快だったんだ。」
「…どうしてですか?」
「さぁ。」


さぁって…ハンジ分隊長の心が全く見えない。これじゃあ私は、ハンジ分隊長を諦めて次の恋に進むことも出来ないよ。


「部屋に戻ったら明日の実験の準備だよ、名前!」


ハンジ分隊長は眩しい笑顔でそう言った。


でも、今私が知りたいのは世界中の謎よりあなたの心。

 
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