空に願いを
「ねぇナナバ、今回の壁外調査は一体何人死ぬんだろうね。」
「さぁ、どうだろうね。」
私とナナバは壁の上に居た。壁外調査が近づくと気持ちが落ち着かない私は、いつもこうやってナナバを誘っては立体機動で壁に登り2人で寝転んで星を見る。これはもう、何年も前からの習慣だった。
壁の上から見る星達は何だかいつもより近くて手が届きそうな気がする。私はここから見る空が大好きだった。
「それには私とナナバも入ってるのかな。」
「そればっかりは考えても仕方ないからね。」
不安な気持ちを隠せない私とは正反対に、壁外調査前だというのに涼しい顔をしているナナバが羨ましい。
「そう言えば、今回も同じ班だったね私達。」
「ああ、ミケが言ってたよ。お前達は息が合ってるからなって。」
「そうなの?偶然じゃなかったんだ。」
もうナナバとは何回も同じ班で壁外調査に出ていて、その度にお互いを守る様に必死に巨人と戦ってきた。これだけ一緒に討伐してたらそりゃあ息も合ってくるはずだ。
「私達もだいぶ年長になってきたよね。自分の身を守りながら、仲間も新兵も守る。よく考えたらすごい負担だよね。」
「確かに。でも名前、私はどんなことがあっても名前を守るよ。」
隣で同じ様に寝転んで空を見ているナナバが、ぎゅっと私の手を握った。
ナナバの言葉に不覚にも涙が出そうになった。
「泣きそうになるからそんな事言わないでよ。」
「え?泣きそうなの?泣きそうな顔ちゃんと私に見せてよ。」
そう言うとナナバは身体を起こして、顔を隠そうとする私の両手を押さえつけて顔を覗き込んできた。この人やっぱりサディストだ。
「名前。私はね、名前の泣きそうな顔も泣いてる顔も全部見たいんだ。」
「…ナナバ。」
ナナバがあまりに真剣な顔で言うから、私は溢れる涙を堪えられなかった。
ねぇ神様。こんな願いは叶えられないのは知っています。でもどうか、この人も仲間達も、もうこれ以上誰も連れて行かないで。
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