いちごのタルト


私には好きな女の子がいる。
でもその子はリヴァイの事が大好きで、今日はついに玉砕覚悟で想いを伝えるらしい。
内心穏やかでは無いけど、たぶん振られるんだろうなぁーと少し心に余裕があったりもする。
私は名前が可愛くて仕方ないけど、リヴァイはあんまり興味が無いみたいだからね。


「ハンジ分隊長ー!やっぱり兵長に振られちゃいましたぁ。ぅわぁーん!」
「あ、名前お帰りー!そうだろうと思ってたよー!」
「ええー!?そうだろうと思ってたって…酷いですよ分隊長ー!」


うんうん予想通り。でもリヴァイは見るが目ないなぁ。名前を振っちゃうなんて、ものすごく勿体無い。


「まぁまぁ、名前の大好きなイチゴのタルト買っといたから。私から傷心の名前へのお見舞いだよ。」
「えっ!?そうなんですか!?ありがとうございます。これ凄く高いのに…。分隊長良い人ですね。」


名前はそう言うと椅子に腰をかけてまた堰を切ったように泣き出した。でもしっかり大好きなイチゴのタルトは口に運んでる。泣くか食べるかどっちかにすれば良いのに。
そんな名前の姿を隣で見ていると、込み上げてくる笑いを我慢できなかった。


「ちょっとー!人が泣いてる隣で何笑ってるんですか分隊長ー!」
「いや、ほんとにそれ好きだなぁと思って。」
「大好きですよ。ふんわりしててサクサクで、甘酸っぱくって美味しいから。まるで私のリヴァイ兵長への恋心みたいです。でもこの恋はほとんどが酸っぱい部分でしたけどね…。あまりに甘い部分が少な過ぎました。」
「なるほどね。でも甘い部分なんて少しでもあったのかなぁ。私にはいつも酸っぱそうに見えたけど…。」
「そんなこと言わないで下さいよー!まぁ実際そうでしたけどね。分隊長の意地悪っ!」


そうやって今度は怒りだした名前。
この子は本当に見てて飽きないな。私のことは全く眼中にないみたいだけど、こうも毎日リヴァイへの恋心を語られるとそろそろ私の気持ちも限界なんだよね。
私の気持ちを知ったら名前はどんな顔をするかな。


「ねぇ名前、口のとこにタルトついてるよ。」
「えっ!?本当ですか!?恥ずかしい。」
「違うそっちじゃなくてこっちだよ。」


そう言って名前の唇のすぐ横をペロッと舐め上げる。


「ハ、ハンジ分隊長っ!?」
「うん、美味しい。ところで名前、私はそろそろ名前のただの恋愛相談役を卒業したいんだけど?」


私の突然の行動に目を丸くして驚く名前の表情も愛らしくて、私はやっぱりこの子が好きだと改めて思ったんだ。

 
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