モノローグ



「お母様!!だから私には執事は必要ないって言ってるでしょう!?どうして勝手に私専属の執事を雇ったりするの!?」
「名前、あなたは自分の立場をちゃんと分かっているの?シーナのお屋敷に住む貴族のお嬢様に、執事が付いていないなんておかしいでしょう?」


確かに私はシーナに住む貴族のお嬢様かもしれないけど、別に執事が付いていなくても良いと思う。何でもかんでも執事にやって貰ってたら、1人で何もできなくなっちゃうじゃない。もう子供じゃないんだし、自分のことは自分でやりたい…。

でも、私を縛るこの大きくて狭い鳥かごの様なお屋敷では、そんな当たり前のような願いさえ叶いそうにない。


「それに若いお嬢様とかっこいい執事って絵になるじゃない?」


お母様は優雅に紅茶をすすりながらそう言った。シーナに住むお嬢様がどうのこうのより、きっとそれが本心なんだと思う。

今までだってお母様が採用してきた執事たちは、顔は良いけど中身は軟弱な男ばっかりだった。我儘を言ったらすぐに辞めていくから、私はわざと我儘を言って歴代の執事たちを困らせてきた。

少しドジで可愛い女の子メイドなら、妹が欲しかった私はすごく嬉しいのに。「もう、これはこうでしょ?」とか言いながら面倒をみたいぐらいなのに…。

でもこの言い合いの発端となった、私の気持ちなんて全く考慮してくれないお母様の「明日から日替りで7人の執事があなたの世話をしますからね。」発言に、私は心底げんなりしていた。もういい加減にして欲しい。


「そう怖い顔しないで、明日からゆっくり自分に合う執事を選べば良いじゃない。」


お母様はのほほんと微笑みながらそんなことを言う。
合うとか合わないとかじゃなくて、私は執事なんて要らないって言ってるのに…。

でも、また今までみたいに我儘を言ってたら、すぐにみんな自分から辞めたいって言い出すんだろう。私は今まで通りにしていれば良い。そう思ってた。


でも、明日から始まるクセ者執事達との壮絶なバトルを、この時の私はまだ知らない。