dead or alive!!


部屋に響く時計の針の音。ピンと張り詰めた空気。旧調査兵団本部で私達リヴァイ班が今していること。それは…


ババ抜きという名の絶対に負けられない戦い!


なぜこんなにも真剣にカードゲームを繰り広げているのかと言うと、発端はリヴァイ兵長の一言だった。


「明日、ハンジが来る。」


その言葉に私たち班員全員に緊張が走った。オルオやグンタなんて露骨に嫌な顔をしている。


「おい名前!お前ハンジ分隊長の面倒見ろよ!」
「何で私なのよ!そう言うオルオが見たら良いじゃない!」


リヴァイ班とハンジ分隊長が合同で何かをする時は、いつも決まってこんな風にイザコザざが起きる。直属の上司がパーフェクトなリヴァイ兵士長なだけあって、リヴァイ班の班員はあまりハンジ分隊長に免疫がない。もうこうやって、ハンジ分隊長の世話を押し付け合うのも日常の光景になっていた。


「おい名前、オルオ。2人共落ち着け。そう言うだろうと思って今日は良い物がある。」


一体何だろう?といった表情を浮かべる私達の前で、リヴァイ兵長が内ポケットから取り出した物…それはトランプだった。


「…え?兵長これは一体どういうことですか?」
「まぁ名前、話は最後まで聞け。今日はこれを使って明日のハンジの世話係を決める。そう、ババ抜きでな。」
「…へっ?ババ抜き…?」


リヴァイ兵長の言葉に私は自分の耳を疑った。何故ゆえそのような面倒くさい方法で…?


「分かったらお前ら全員こっちに集まれ。仕方ねぇから俺も参加してやる。仕方ねぇからな。」


(あ、あぁ〜。やりたいんだババ抜き。)


なるほどね。正直、ハンジ分隊長の世話係なんてジャンケンでもしてさっさと決めて寝たかったけど、人類最強の我らがリヴァイ兵士長様がババ抜きをご所望だ。これは…嫌でも付き合うしかない。


そして話は冒頭に戻る。そんなこんなで、絶対に負けられない戦いがここにはある!と言わんばかりに私たちは絶賛ババ抜き中という訳だ。

みんないつジョーカーを引くか分からない恐怖で緊張してる。でも、私はジョーカーの行方を知っている。
何故なら、カードの配分が終わった後からマッチでも挟めるんじゃないかと言う位に眉間に深い深いシワを刻んでおられる方が若干1名私の隣にいるからだ。


「おい名前!ぼさっとしてねぇでさっさと引け!」
「は、はいっ!」


お〜怖っ!ジョーカーを所持しているからって焦ってますねリヴァイ兵長。
でも私は絶対にジョーカーを引かない自信があった。どうしてかと言うと、どのカードを引こうか兵長のカードに手を伸ばしながら悩んでいると、ある1枚のカードに手を伸ばした時だけ兵長の眉間のシワがすっと消えるから!


(絶対にあれだ。兵長ってば分かりやす過ぎ。)


この方法で最後まで判別したら絶対に負けない!
何回かこうして兵長のカードを引き、残りは私とリヴァイ兵長の一騎討ちになった時、事件は起きた。

兵長の手元には2枚のカード!さぁ、これまでの様にどっちがジョーカーか教えてくれたまえ兵長の眉間さん!
カードに手を伸ばしながら、兵長の眉間を見つめていると、突然兵長が私の手を掴んだ。


「わっ!へ、兵長!?」
「名前…お前…俺の瞳に映ったカードでジョーカーかどうか判別してやがるな。」


な、何を言い出すんだこの上司は!そんなズルしてませんってば!


「そんなことしてません!」
「じゃあどうして毎回カードじゃなくて、俺の目の辺りを見ていやがる。」


私が見てたのは瞳じゃなくて、額だから!でも、どっちにしろ同じ様なものなのかな。そう思うと口籠ってしまう…。



「えっと…それは…。」
「やっぱりな。せこいマネしやがって。罰としてお前はハンジの世話係だ。」
「ええーっ!?嫌だぁー!!」


こうしてリヴァイ兵長に直々にハンジ分隊長の世話係に命じられた私は、もう2度と兵長とはカードゲームはしないと固く胸に誓った。

だって全てを語っているかの様な額のシワが嫌でも目に入るんだもん!

 
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