兵長vs団長!!


カタカタと震える私の手。
私は今、目の前にいるエルヴィン団長にお茶を出している。
何故そうなったのかというと、事は10分前にさかのぼる。




ハンジ分隊長に書類を持って行くように言われた私は、エルヴィン団長の部屋を訪れていた。
「ハンジ分隊長から預かった書類です。よろしくお願いします。」
「ああ、ありがとう。ところで名前、最近リヴァイのお茶汲みをしているらしいね。」
「あっ、はい!そうなんです。」
「そうか。私も名前が入れるお茶を飲んでみたいんだが。あのリヴァイが気に入る位なんだから相当美味いんだろう?」
「そ、そんな!美味しいかどうかはあまり自信がありません…。」
「そうか。1度私にも淹れてみてくれないか。」


にっこりと満面の笑みで言われ断わることができなかった私は、エルヴィン団長にお茶を淹れる事になった。


そして話は冒頭に戻る。


普段からあまり接点のないエルヴィン団長にお茶を出すなんて、あまりの緊張に手が震えてしまう。
震える手でカチャカチャと音を立てながら何とかエルヴィン団長の机にティーカップを置くと、


「そんなに緊張しなくても良いんだよ。」


と言ってエルヴィン団長は私の震える手を取った。

「名前、私のわがままを聞いてくれてありがとう。」


紳士的なエルヴィン団長の振る舞いに頬が赤くなってしまう。
私の周りにはこんな紳士的な人いないんだもん。
リヴァイ兵長もオルオもモブリットも紳士とはかけ離れすぎてる。


エルヴィン団長に少しドキドキしていたその時、


「おいエルヴィン入るぞ。」


発せられた言葉と同時にリヴァイ兵長が入って来た!
この人自分はノックしないの!?人にはノックしろって言うクセに。しかも相手はエルヴィン団長ですよ!


「ああリヴァイ。良い所に来たな。今、名前にお茶を淹れてもらってたんだ。」
「何?どういう事だ名前。」


私を見るリヴァイ兵長の顔が怖い。眉間に皺が寄りまくってます…。
私は咄嗟に手に持っていたお盆で自分の顔をサッと隠した。


「私が名前に無理を言って頼んだんだ。」
「勝手にコイツを使うな。」


なっ!?団長に向かってその態度はマズイのでは!?この世の中は縦社会なんですよリヴァイ兵長!
リピートアフターミー!縦社会ー!!


「うるっせぇ。黙ってろ名前。」
「す、すみませんっ!」


しまった!心の声が口に出てしまってたぁ。
そんな眼で睨まないで下さいよぉ。


「はははっ。名前は面白いな。リヴァイが気に入るのも分かる。」
「とにかく、次からコイツを使う時はまず俺に言え。」
「リヴァイの許可が必要なのか?」
「そうだ。」


えっ?兵長が私を気に入ってる?
違う違う!その逆であの日お茶をぶっかけちゃったから、毎日のお茶汲みという罰が与えられている訳で決して気に入るとかじゃないですよ団長!
と、心の中でエルヴィン団長に訴えかけていると、ふいにリヴァイ兵長が私の腕を掴んで歩き出した。


「とにかくそういう事だ。行くぞ名前。」
「えっ!?あっ、はい!」


返事をするよりも早くリヴァイ兵長に引きずられる。

「名前、リヴァイをよろしく頼むよ。」


部屋を出る直前に、エルヴィン団長はそんな訳の分からない言葉を私に投げかけた。


「えっ?どういう意味…」


でも、真意を確かめる前にドアが閉まってしまった。




この日1番印象的だったのは、ドアが閉まる直前に見たエルヴィン団長の見たこともない様な嬉しそうな表情と、リヴァイ兵長に触れられた腕が熱を帯びてなかなか冷めてくれなかったことだった。

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