手のなる方へ


オルオ、ペトラ、エレンの3人に盛大に裏切られた私は、兵長に首根っこを掴まれたまま兵長の仕事部屋に連れて来られ正座をさせられていた。


(うぅ、何でこんな事に…。)


「おい名前。」
「は、はいっ!」

リヴァイ兵長に名前を呼ばれビクッと肩が跳ねる。

(あぁ。また怒られる〜。下手したら蹴りの2、3発飛んでくるかも…。)


リヴァイ兵長からの躾という名の暴力を覚悟した私だったけど、兵長の口から出た言葉はあまりに意外すぎるものだった。


「どうしてエレンと抱き合っていた。」


へっ?どうしてお茶を淹れるのを忘れていたじゃなくて、まさかのエレン?
どうしてと言われても…。


「え、えーとですね、エレンが子犬みたいだったんでつい…。」
「ついだと…?お前はつい男と抱き合うのか。」
「そ、そんなことしません!エレンが捨てられて雨に打たれてる子犬みたいだったからです!兵長も道端に捨てられてる子犬がいたらつい抱き上げたりしますよね!?そういう原理です!」


(よっしゃー!完全なプレゼンテーション!これなら兵長も分かってくれるはずっ!)


「俺はそんな汚ねぇモンを抱いたりはしねぇ。」


(忘れてたぁ。この人は超がつく程の潔癖さんなんだったぁ。)



「うぅ…はい。」
兵長に言い返す言葉が見つからず、私はがっくりうな垂れた。


これ以上は何か言い訳しても余計に事態が悪化するだけだろうし、さっさと謝って許してもらおうと顔を上げた時、私は兵長の腕の中に収められた。


「へ、兵長!?」


いきなり抱きしめられ、驚きで息が詰まりそうになる。


「お前がエレンにしていた事を真似してるだけだ。」


そう言うと兵長は私を収めている腕の力を強くした。
こんな風に男の人に抱きしめられたのは初めてで、シャツ越しの兵長の匂いとか思っていたよりもたくましいその腕や胸にドキドキした。


(何でこんな事にっ…。)


あまりの恥ずかしさに耐えれなくなった私は徐に口を開いた。


「兵長っ…恥ずかしいです。」
「そうか。」


決死の訴えも虚しく、兵長は私を解放するどころか腕の力を弱めることさえしてくれない。
心拍数は上がるばかりで、きっと兵長にも聞こえてるんだろうなと思うと余計に顔が熱くなった。



(もう駄目だ。どうにかなりそう。)



そう思った瞬間、部屋のドアが勢いよく開いてハンジ分隊長が入ってきた。


「リッヴァーイ!遅くなったけど報告書持って来たよー!って何この状況!?」
「ハンジ…てめぇ勝手に入んなっていつも言ってんだろうが。」



(分隊長!?た、助かった…。)



ハンジ分隊長の登場で、リヴァイ兵長から解放された私はほっとしたような少し残念なような自分でもよく分からない気分だった。

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