プレイバックオーマイブラザーズ! 兵長の場合


俺が初めて名前を見た時、オルオとペトラとつるんでヘラヘラ笑ってやがった。あまりに気の抜けた名前の姿を見て、こいつは兵士には向いてねぇなと思った。時に必要となる非情な判断や、次々に死んでいく仲間…こんな環境ではやっていけねぇだろうと。

だが俺の予想は外れた。名前がハンジの班に属して最初の壁外遠征で、索敵を担当していたハンジの班が壊滅状態だと伝達がまわってきた。名前は死んだか逃げ出すかしたんだろうなと俺は思った。でも、援護に駆けつけた俺の目に入ったのは、手負いのハンジを守りながら、たった1人で巨人と戦う名前の姿だった。巨人に囲まれ絶望的な状況でも、あいつは表情一つ変えずに返り血を浴びながら巨人をなぎ倒していた。こんな状況の中で凛とした空気さえ感じさせるその姿を、俺は綺麗だと思った。

その後、何度かハンジの班から名前を引き抜こうとしたがその度にあのクソ眼鏡が大泣きして、俺の思い通りにはならなかった。
奴も相当名前を気に入っているらしい。
だから俺は、昨日エレンの代わりに持って来た茶を、俺にぶっかけたことをダシにして名前に毎日茶を持って来いと命令した。ハンジのせいで俺の班に入れるのは難しそうだからな。

ヘラヘラしてると思ったら、兵士としては優秀。
優秀だと思ったら、何もない所で転ける。

それに…男に免疫がないと思ったら、エレンに抱きついてやがる…。


(本当に読めねぇ女だ。)


「おい名前、毎日茶をいれるんじゃなかったのか。初日からサボって何エレンと抱き合ってやがる。」


エレンに抱きつく名前も、エレンの嬉しそうな顔も全てに虫唾が走る。こいつらデキてんのか。


「す、すみません今から行こうと思ってたんです!」
「どうだかな。さっさと来い。」


俺は名前の襟を掴んで思いっきりエレンから剥がしてやった。俺の予想をいつも裏切る行動をする名前。
こいつだけは本当に思い通りにならねぇな。

でも俺はこの時、ある事を心に決めた。
思い通りにならねぇこの女に、俺のことしか見えなくなる様にしてやると。


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