プレイバックオーマイブラザーズ! エレンの場合


名前さんの第一印象は、「真面目でお堅そうな人」だった。俺が名前さんの姿を見かけた時は、いつもハンジ分隊長の隣ですごく真面目な顔で仕事をしていたから、お堅そうな人だと勝手に思い込んでいた。
でも、オルオさんと兵長に同時に仕事を言われて焦ってる俺に話しかけてくれた名前さんはすげー気さくで、その時に初めて見た笑顔が可愛いと思った。

だから、オルオさんとペトラさんと居る時に名前さんが現れて、俺は今すごく舞い上がってる。さっきから名前さんはオルオさんに怒ったり、ペトラさんに泣きついたりと忙しく、初めて見るその表情にまた名前さんの新しい一面を知れて嬉しかった。
でも、名前さんにこんな悲しい顔をさせてしまってるのは俺のせいだ。俺のせいで名前さんは毎日リヴァイ兵長にお茶を出すことになったんだ。


「名前さん、すみません俺のせいで…。」
「エレン君のせいじゃないよ!あんなタイミングでエレン君を呼びつけたオルオと、あんなところで転けた私が悪かったの。」


名前さんは俺をかばってくれてる。でも、俺がもっと頭を使って上手くやってたら名前さんを巻き込むことはなかったんだ。


「それでも、俺の代わりに兵長にお茶を持って行ってもらった訳ですし…。本当にすみません。」


俺は名前さんに頭を下げた。今の俺には謝ることしかできない。
いっそのこと罵ってくれた方が気が楽だと思っていると、突然ふわっと良い香りが俺を包んだ。


「エレンくーん!君は悪くないんだよー!」
「ちょっ…名前さん!?」


あまりに唐突に名前さんは俺を抱きしめた。柔らかい感触と甘い香りに一気に顔に熱が集まる。


「おい名前、新兵を甘やかすな。」
「はいはい。」


そう言いながら俺と名前さんを引き離そうとするオルオさんの顔は、今まで見たこともないぐらいに悔しそうで、もしかしたらオルオさんも名前さんのこと…。
でも今はそれよりも、俺から引き離そうとするオルオさんに負けないように、さっきよりも密着して抱きついてくる名前さんの身体が…!


(名前さん!俺、これ以上は色々やばいです!)


「あ、兵長。」


この状況に完全にのぼせていた俺は、ペトラさんの声と共に現れたその人物の顔を見て一気に凍り付いた。
リヴァイ兵長の顔もまた、今までに見たことのないぐらいに恐ろしい顔をしていたからだ。

殺気すら感じさせる兵長の姿に、俺はオルオさんなんて一瞬で霞んでしまう程の強力なライバルの存在を知った。

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