真夜中の調査


兵長に机を借りて書類を書き写す作業に取りかかるも、何だかソワソワして集中できない自分がいた。

(好き…?私が兵長を?)

今まで恋なんて女の子らしいこととは無縁だったから、私はまだ自分の気持ちに半信半疑だった。ちらっと兵長の方を盗み見てみると、ドキっと胸が高鳴った。

(うーん。やっぱりおかしい。)

明日ペトラにでも相談してみるか。うん、そうしよう。
時計を見るともう1時を過ぎていて、こんな時間まで兵長と一緒に居るのは何だかすごい非日常感だった。部屋の中はもちろん静かで、時計の音とペンを走らせる音しか聞こえない。…まぶたが重い気がするのは…たぶん気のせいじゃない…。このままだと、書類を仕上げる前に寝るという大失態を犯してしまうと思った私は、兵長と話をして眠気を飛ばす作戦を決行することにした。

「あの…兵長。」
「何だ。」
「兵長って…お付き合い…してる人とかいるんですか?」
「いねぇよ。」

はいっ即答!会話終了ーっ!でもそっか、いないんだ。良かった。…って良かったって何!?兵長から返ってきた言葉に安心してる私がいて、これには自分でも驚きだった。よしっ!もうこうなったら聞きたいこと全部聞いちゃえ!夜中のテンションってほんとに怖い!

「…じゃあ、どういう感じの女性が好きなんですか?」

その質問に兵長はペンを走らす手を止めて、顔を上げ私の方をじっと見た。

「…なんだ名前。お前、俺の女の趣味が気になんのか?」
「気になるというか…ちょっとした調査と言いますか…。」
「どうしてそんな事が気になる?」

どうしてって言われたら、こういう理由ってはっきりしたものはないけど、ただ…。

「兵長のこともっと知りたいなって思って。」
「………。」

あれ…?私変なこと言った?兵長は少し驚いた表情でこっちを見ていて、何か気に障る様なことでも言ってしまったんじゃないかとハラハラした。

「…バカみたいに」
「え?」
「バカみたいに明るい奴。」

呟くように兵長はそう言った。あれ?以外と普通。スレンダー超絶美人とか言うと思ってたけど。バカみたいに明るい奴って…私とはかけ離れてるなぁ。私は繊細でネガティブな人間だからなぁー。

「なるほど。よく分かりました。」
「喋ってねぇで手ぇ動かせ。」
「はいっ!」

あんまり眠気は飛んで行かなかったけど、兵長のことを少し知ることができて嬉しかった。机の上に積まれた書類はあと50枚ほど。適当にやってもしょうがない…っていうか適当にやったら殺される!夜は短し頑張れ私!

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