名誉挽回


みなさんこんばんは!
私名前は今、兵士長室に来ております。ちなみに今は夜の10時!
どうしてこんな時間にこんな所に居るのかというと、昼間命懸けの巨人実験の時にハンジ分隊長からリヴァイ兵長が会議で10時頃に戻って来るという情報を仕入れたからです。

疲れて帰ってきた兵長に「兵長お疲れ様です。お茶を淹れておきましたわ。」なーんて言いながらスマートにお茶を出したら、兵長も絶対私を見直すはず!
最近は怒らせちゃったりとかしてばっかりだったからなぁ。この辺りで名誉挽回しなければ!
兵長何て言うかなぁ。「名前ありがとう!もうこれからはお前のこと愚図だなん言わねぇ。」とか言ったりして。そんな場面を想像しただけで顔がニヤニヤしてしまう。


兵長の帰りを今か今かと窓の外を眺めながら待っていたら、少し遠くから馬の足音が聞こえてきた。
窓から下を覗いてみるとやっぱりエルヴィン団長とリヴァイ兵長だった。

「帰ってきたっ!よし、作戦開始!」

夜だからコーヒーじゃなくて、この前兵長が「悪くねぇ。」って言ってた紅茶を淹れることにした。準備ができたらすぐに兵士長室に戻る。
そしたら後は、このティーカップを兵長の机に置くだけ。

…のはずだった。

なのに、私としたことが机の上に置く瞬間に手を滑らせ、あろうことか兵長の机に綺麗に積まれていた書類の上に紅茶をぶちまけてしまった。

「…え?…うそ…。」

しかもその書類たちは、よく見ると兵士達から提出されたと思われるこの前の壁外調査の報告書だった。
かなりの枚数だからもしかしたら全兵士分かもしれない…。

「どうしよう!?」

もう兵長も戻ってくるだろうし書き直してる時間なんてない!
予想外過ぎる出来事に青くなっていると、ガチャっとドアが開いた。

「名前そこで何してる?」

それは紛れもなくリヴァイ兵長の声で私に逃げ場なんてなかった。

「兵長…あの…私お茶を…そしたら書類が…」

説明しようとしたけど涙が溢れてきて声が詰まってしまう。
もうダメだ。兵長に嫌われる。

「何泣いてんだ名前」
「…っ…ごめん…なさいっ…。」

私の様子がおかしいことに気が付いた兵長は、こっちに近付くと机の上を見て溜息を吐いた。

「…そういうことか。」

殴られる!と目をぎゅっと瞑って身構えた私を、兵長はその腕で抱きしめた。

「…へい…ちょう…?」
「ピーピー泣くな。お前が泣くと調子が狂う。」
「…っ…そんなこと…言われても…。」
「名前、お前ここで俺が帰って来るのを待ってたのか?」

兵長の問いかけに私は弱々しく頷いた。その結果こんな大惨事を招いてしまったんだから。

「そうか。馬鹿だなお前。」

私を抱きしめたままそう言った兵長の声は、その言葉とは裏腹に優しかった。

「はい…。自分でも自分が信じられません。」
「そんな馬鹿名前にもう1つ教えてやる。あの書類は明日の朝エルヴィンに渡す書類だ。」
「えっ!?」


私の悲劇はまだまだ終わりそうにない。


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