近すぎます!兵長!
「な、なんで兵長が出てくるの!?」
私はペトラの発言に心底驚愕した。
まさかこのタイミングで兵長という言葉が出てくるなんて思ってもみなかった。
「良いから今すぐ兵長にお茶出してきなさいよ。せっかく綺麗にしたんだから。」
「う、うーん…。」
でも、もしかしたら兵長の機嫌が悪いのは自分のせいかもしれないしな…。
このまま兵長の機嫌がずっと治らなかったりしても困るし、ここは直接本人に聞いて私に非があるんだったらサクっと謝っちゃうのが良いのかもしれない…。
そう考えた私は、ある決意をした。
「分かった!ちょっと兵長のとこに行ってくる!」
「名前えらい!また後で兵長の様子どんな感じだったか教えてね。」
「了解!じゃあまた後でね。」
覚悟を決めてからの私の行動は早かった。
お茶の準備をしてあっという間に兵長の部屋の前までやって来た。やって来てしまったのだ。
「ついに来ちゃった…。」
ドアの前で大きく深呼吸をして、手に持っているお盆をぎゅっと握る。
(よしっ!いざ出陣!)
意を決して兵長の部屋のドアをノックした。
「リヴァイ兵長失礼します!」
「…入れ。」
うわぁー。やっぱり部屋に居たんだ。しかも機嫌悪そうな声…。
兵長の声を聞いた私は、その場から逃げたくなった。
でもここで逃げるわけにはいかない!ペトラに怒られるのも嫌だし!
「失礼します。」
「名前か。何の用だ。」
兵長は机で書類の整理をしているようだった。ちらっとこちらに向ける視線が鋭いのは気のせいじゃないだろう。
「お茶を持って来ました。」
「いらねぇと言ったはずだが。」
「それはそうなんですけど…。兵長にお茶を淹れたかったんです。私のわがままですし、いらなかったら捨ててもらって構いません。」
「……勝手にしろ。」
兵長はずっと書類にばかり目を向けていて、こっちを全然見てくれない。それが少し寂しかった。
いつもはそんなこと無いのに、やっぱり私に怒ってるんだろうな。
兵長の態度に寂しさを感じながら机にティーカップを置いた時、いきなり腕を掴まれた。
「へ、兵長!?」
「名前、これからは勝手に他の奴に茶を出すな。」
「…え?」
「分かったか。」
「は、はい!」
正直、兵長が何でそんな事を言うのかは全然分からなかった。
でも、ここは従っておかないとまずいと感じてあまり何も考えずにすぐに返事をしてまった。
「それからお前…。」
兵長はそれだけ言うと椅子から立ち上がり、今度は私の顔を掴んで上を向かせた。
「むぅっ!?」
「………。」
今度は一体何!?
まじまじと私の顔を見る兵長の顔が近い。
あまりの至近距離にお互いの唇が触れてしまうんじゃないかとさえ思った。
(兵長!これは何の拷問ですかぁー!?)
恥ずかしさに耐えきれなくなった私はぎゅっと目を閉じた。
さっきから心臓の音がバクバクうるさい。
兵長はしばらくそうやって何も言わずに私の顔を眺めた後、満足したのかやっと私を解放した。
「…悪くない。」
兵長がそう呟いた気がしたけど、あまりの恥ずかしさと緊張から解放され、その場に座り込んだ私はそれどころじゃなかった。
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