食べちゃいたい!?


ペトラにグイグイと腕を引かれてやって来たのは、さっきまで私達が居たリヴァイ班のみんなの所だった。


「名前さん!」
「あっ!エレン!」
「あれ…名前さんさっきと何か違いますね。」
「あ、やっぱり変かな?」


やっぱり私にお化粧はまだ早かったんだ。
似合わないなら似合わないとはっきり言って良いんだよエレン!


「いや俺はすごく良いと思います!もちろんいつもの名前さんも素敵ですけど!あと…さっきのミカサは本当にただの家族なんで!」
「あ、ありがとう。」

エレンが真っ赤な顔で言うから何だかこっちまで恥ずかしくなってきた。
ちらっとペトラの方を見ると口元に笑みを浮かべてうんうんと頷いている。
なるほど…。ペトラお姉様はみんなの反応を私に見せて自信をつけさせようとしていっしゃっしゃるのか。


どこから現れたのか突然、私とエレンの間にさっきのパンチで両頬を腫らしたオルオがぐいっと割り込んできた。


「おい何色気づいてんだガキ。名前は俺に惚れてんだぞ。気安く話かけんじゃねぇ。俺の為に綺麗になろうと努力してんだよ。」
「はぁ?ねぇペトラ、この人まだおかしいこと言ってるんだけど。」
「もう放っておこう。これは病気だわ。」
「なんだ妬いてんのかペトラ。お前も俺のお…ぐふぅっ!?」


ペトラの渾身の一撃が今度はオルオのお腹に見事に決まった。
ナイスペトラ!


「オルオさん!?」
「エレン放っておいて良いよ。」
「は、はい…。」


やれやれ。オルオはほんとに懲りない。もう何度ペトラと私のパンチを受けてるんだか。
その度にああやって床に転がってるのに、全く反省の色が見えないっ!


「名前ー!見つけたぁー!」


その時、背後からよーく知っている陽気な声がドドドドドという足音と一緒に聞こえてきた。


「ハンジ分隊長どうしたんですか?」
「んっ!?名前何かいつもと違う!可愛いっ!」


そんなに顔を覗き込まれてまじまじと見られると、いくらハンジ分隊長でもちょっと恥かしい。


「そ、そうですか?」
「うん!いつもより何倍も可愛いよ。食べちゃいたいぐらい。」
「え…?食べ…?」
「うん、食べちゃいたい。」


聞こえてますからぁー!
この人は真顔でなんて恐ろしいことを言うんだぁー!
そして顔が近いっ!私の両肩に手を置いたハンジ分隊長の顔がじりじりと近づいて来る。


「ハンジ分隊長!それ以上したら危険です。リヴァイ兵長に殺されますよ。」
「あっ!確かにそうだね。私は名前も食べたいけどソニーとビーンとも遊びたいから、まだリヴァイに殺される訳にはいかないんだ。」
「は、はぁ…。」


何だかよく分からないけどペトラの言葉を聞いて、ハンジ分隊長は私から離れた。
た、助かった…。ありがとうペトラ!


「名前、そういうことで私はソニーとビーンの所に戻るね。明日は名前にも実験に付き合ってもらいたいからお昼から予定空けといてねー!じゃあねー!」


そう言い残してハンジ分隊長は去って行った。
まるで嵐のように現れて嵐のように去って行ったな。


「さっ、名前今からが本番よ。」
「えっ?本番って何?」
「もちろん兵長に決まってるじゃない!」


ペトラの兵長という言葉に私は一気に青ざめた。

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