愛され者


「エレンに何かご用ですか?」
「おいミカサ!止めろって!」

私をエレンから引き剥がしたその子の名前はミカサというらしい。
彼女から私に対する凄まじい怒りのオーラを感じる。


(こ、怖いっ!!)


「ミカサ!名前さんは俺の恩人なんだよ!前に困ってたところを助けて貰ったんだ。」
「それが何?名前さん、どうしてエレンに抱きついたんですか?」
「えっと…あ、挨拶のような物でして…。」
「そんな挨拶聞いたことがありません。」


そうか。このミカサっていう子はエレンの彼女か…。
それは悪い事をしちゃったな。
2人の関係を察知した私は、デリカシーのない自分の行いを反省してミカサに謝ることにした。


「ミカサ…ごめんなさい。自分の彼氏が他の女に抱きつかれたりしたら、そりゃ腹立つよね。私の行動が軽薄でした。」
「エ、エレンは家族です!」


私の言葉に頬を赤らめながら少し大きな声で焦るミカサは、さっきまでの威圧感は嘘のように消えただの可愛い女の子だった。


「そうですよ名前さん!ミカサは家族です!それに、俺は…俺は名前さんがっ…!」
「恩人なんでしょ?」
「エレン、あの時の兵長にお茶を持って行った事をそんなに感謝してくれてるんだね。ありがとう。」
「ち、ちが…俺は…。」


にっこり微笑みながら言うと何かを言いたそうにしながらも、エレンは顔を赤くして俯いてしまった。


(何かこの2人可愛い…。ミカサはエレンのこと家族以上に思ってそうだけどね。)


「あっ!そうだ名前さん!俺、ペトラさんとオルオさんに言われて名前さんを呼びに来たんです。今すぐに来て欲しいそうです。」
「ペトラとオルオが…?分かった、すぐ行く!」


あの2人からお呼びがかかるなんて珍しい。それに今直ぐに来て欲しいなんて何か緊急事態発生の予感!


「じゃあそう言うことで私は行くね。ミカサ、嫌な思いをさせちゃって本当にごめんね?」
「いえ…。私の方こそ失礼なことを言ってしまいすみませんでした。」


ミカサの言葉からはさっきまでのようなトゲトゲしさはもうなかった。
何とか許してもらえた様で私はホッとした。


「じゃあみんなまたね!」


ミカサとエレン、それに今の騒動を見ていた104期達に手を振り、私はペトラとオルオの元に向かって走り出した。

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