何だが濃ゆいよ104期


「すごく綺麗な黒髪だ…。」


誰かにいきなり髪の毛を触られたのを感じた私は、バッと後ろを振り返った。
するとそこには、またまた初めて見る男の子が少し頬を染めて立っていた。



「す、すまない。綺麗な黒髪だったんでつい。俺はジャン・キルシュタイン。…あんたの名前は?」
「私はハンジ班所属の名前だけど…。」
「名前か。良い名前だ。」
「ジャンも104期訓練兵だったの?」
「ああそうだ。」



やっぱりか!じゃあ私の方が先輩なんですけど!?
何でいきなり髪の毛触ってきた挙句にため口なのよ!
髪が綺麗だなんて褒められてちょっと嬉しいのは嬉しいけど…。


「ジャン…、私の方が一応先輩なんだけど?」
「ああ、そうみたいだな。」


って知ってたんかい!!この世の中は縦社会なんだからね。
初対面の先輩にはきちんと敬語を使わないと!
そんなちょっと照れた顔してもダメなんだから!
この突然現れたオマセボーイのジャンに少し説教してやろうと口を開きかけたその時―、


「おいジャン、いきなり先輩をナンパとかお前も隅に置けねぇな!」
「うっせぇユミル!」
「まっ、私にはクリスタが居るから関係ねぇけど。」


そう言って自分の腕に閉じ込めている金髪美少女の頬にキスを落とすユミルという謎の女子。
んん!?真っ昼間の食堂で秘密の花園ですか!?
私の見間違い!?
でも何度目を擦っても、やっぱり間違いではなかった。
女の子が女の子を抱きしめて頬にキスをしている。
最近の子はコミュニケーションの取り方も進んでるんだなぁ。


そういえば私もこの間は兵長とあの位の距離だった訳で…。
つい最近の兵長に抱きしめられた時のことを思い出して顔に熱が集まりだす。


「名前さんどうしたんっすか?顔赤いですけど?」
「な、何でもない!」


コニーにそう言われて首をぶんぶんと思いきり横に振る。


(今は兵長なんてどうでも良いんだから!!)




コニーから話を聞くと、どうやらこのそばかす女子ユミルと金髪美少女クリスタも104期訓練兵だったらしい。


(何か104期の子達めちゃくちゃキャラ濃ゆいんですけど!?)


私は心の中で思わず叫んだ。
さっき食堂に来てから、パンを奪われ髪に触れられ、そして女の子同士の濃厚なコミュニケーション!!
しかも104期といえば大好きなエレンも巨人化できるという、もうキャラがどうこうというレベルの話ではないじゃないか。



「はぁ…。何か今年の新兵はみんな凄いね。」
「そうっすか。そう言われると照れるっす。」



いや、今の言葉は別に褒めた訳じゃないんだよコニー・スプリンガー君。
嬉しそうな笑顔で頭を掻いているコニーがまぶしい。
みんな素直そうではあるけどね。
ただ素直過ぎる感じもするけど…。


104期達を横目に私はお皿のスープを胃に流し込んだ。
うん、やっぱりサシャのせいでいつもより少なめのご飯になった。


「ごちそう様でした。」


ヤケ食い作戦が失敗に終わってしまった私は、104期達との会話もそこそこに食堂を後にしようと席を立った。



その時、食堂に入ってくるエレンの姿が見えた。


「エッレーン!久しぶりぃー!」
「ちょっ、名前さん!?」


久しぶりのエレンに嬉しくなってしまった私は、この前のようにエレンに抱きついた。
頬を真っ赤に染めているのがやっぱり可愛い。


(はぁ〜癒されるぅ〜。)


でも、そんな私の幸せタイムは誰かが私をエレンから引き剥がした事によってまたもや終わりを告げた。

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