あなたに贈るハッピーバースデーE


つ、ついに来たっ…!近づいて来るリヴァイさんとハンジさんの声に、私の心臓はドキドキとうるさいくらいに高鳴っていた。

(リヴァイさんどんな顔するんだろう。喜んでくれるかな。)

高まる緊張に両手を握り締めたその時、眉間にシワを寄せハンジさんにぶつぶつ文句を言いながら食堂に入って来るリヴァイさんの姿が目に入った。
その瞬間にエレンの「せーの!」の掛け声が聞こえて…。


『兵長!!お誕生日おめでとうございまぁーす!!』


みんなの声と共に食堂に響き渡る大きな大きな拍手の音。少しうるさく感じるぐらいのその音はなかなか鳴り止まず、私も周りの人達に負けないように強く手を叩いた。
食堂に入った瞬間に私達に取り囲まれたリヴァイさんは少し驚いたような顔をしていて、珍しいその表情が見れたことが私は嬉しかった。


「…何だお前ら…揃いも揃って…。それに、名前。お前までここで何してんだ?」
「リヴァイさん、お誕生日おめでとうございます。朝からずっと言いたかったんですけど、やっと言えました。」


私のその言葉を聞いたリヴァイさんは、一瞬間を置いてから「あぁ、誕生日。そう言えば今日だったか。」なんてここに集まってる人達みんながズッコケたくなる様なことを言う。
そう言えばってリヴァイさん自分の誕生日忘れてたの!?私にとっては何よりも大切な日なのに!

「名前、今日は家で大人しくしてるんじゃなかったのか。それにまたその格好してんのか。」

痛いところをつかれ、このままだと宴より先にお説教が始まってしまう!と焦った私は、リヴァイさんの後ろにまわり込みその背中を主役席の方に向かってぐいぐいと押しながら必死に言った。


「ま、まぁまぁリヴァイさん!今日はせっかくのお誕生日なんですし、お説教は家に帰ったらちゃんと聞きますから!今はハッピーな気持ちで皆さんと過ごしましょうよ!」
「そうだよリヴァイ!今日は主役なんだからまぁ座りなよ!」
「…フン。仕方ねぇな。」


仕方ねぇって言いながらも、席に着いたリヴァイさんは少し嬉しそうな顔をしてる気がした。と、言ってもほとんど表情は変わらないんだけど。それでも、ずっと一緒にいるからか、鈍い私でもそれぐらいのリヴァイさんの様子の変化は分かる。

リヴァイさんは「嬉しい」なんて絶対に言わないだろうし、まだ乾杯すらも始まってないけど、私は心の中で「大成功!」と喜びを噛みしめた。あと不安なのは、あのケーキを喜んでもらえるかだけだなぁ。


その後、忙しいのに顔を出してくれたエルヴィンさんの乾杯の音頭で宴は始まり、わいわいと楽しい時間は過ぎて行く。リヴァイさんはオルオさんやペトラさんを始めとするたくさんの部下のみなさんに囲まれていて、本当に慕われてるなぁって改めて思う。
私はリヴァイさんから少し離れたエレンの隣に座っていて。


「名前さん、兵長の隣に座らなくて良かったんですか?」
「うん。私はまた家に帰ったらリヴァイさんと一緒に過ごせるから。」
「兵長はそうは思ってない気がしますけどね。俺は明日、兵長に削がれないか不安ですよ。」
「どうしてエレンがリヴァイさんに削がれるの?」


と、訊いてみると「名前さんは分かってないなぁ。男には色々あるんですよ。」とやれやれと言った感じでふーっとため息を吐きながら言うエレン・イェーガー君。
ん?もしかしてエレン酔っぱらってる?なんだか顔も赤いし、いつもとキャラが少し違う気がする。良いなぁ。私もお酒飲みたかったなぁとエレンを羨望の眼差しで見てしまう。

乾杯の直前に手に持っていたお酒をなぜかリヴァイさんに取り上げられ、「いいか?名前。お前は家以外では絶対に酒を飲むな。」と釘を刺されてしまった私は、仕方なく水を口へと運ぶ。
何でリヴァイさんそんなこと言うのかな?って104期のみんなに相談したら「きっと名前さん酒乱なんですよ。それ以外考えられません。」と口々に言われてしまって…。そんな覚えはないんだけどなぁ。


(…そろそろバースデーケーキの準備をしようかな。)


そう思って席を立つと、何故か遠くの方からもの凄いスピードで息を切らしながら走ってやって来たジャンが、青ざめた表情で私に向かって言った。

「…名前さんっ…!…兵長のケーキがっ…!!」


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