あなたに贈るハッピーバースデーA


リヴァイさんをお見送りした後、家の中に戻った私はすぐに家事に取り掛かり、物凄いスピードで今日やるべき全ての家事を次々と終わらせていった。
これはもう「名前、お前そんなに早く動けたんだな。」ってリヴァイさんが心の底から感心するレベルだと思う。

切迫した状況なら、意外と私もテキパキ動けるのかもしれない。兵士長の妻がのろまでマヌケなんてあまりに恰好がつかないから、これからはもう少しテキパキ動く素敵な奥さんを目指してみようと思う!


そして次は、いよいよ今日の大仕事!リヴァイさんにプレゼントするバースデーケーキ作り!


プレゼントを何にするか散々悩んで悩んで悩んだ結果、私が出した答えは大きなバースデーケーキを作ることだった。何か物を買ってプレゼントしようかとも思ったけど、きっとリヴァイさんは調査兵団の皆さんから両手じゃ抱えきれない程のプレゼントを貰うだろうから、今年の私からのプレゼントは敢えて手作りのバースデーケーキにすることにした。
これならきっと誰とも被らないだろうし、それにリヴァイさんはきっとバースデーケーキのロウソクを吹き消したりしたことないと思う。性格的にもそうだけど、ケーキなんて食べ物自体この辺りではほとんど見かけることもないから。シーナに住む貴族の人だったら、毎日食べるような当たり前のものなのかもしれないけど。


ケーキだけじゃ物足りない気がするけど、食糧難のこの時代、ケーキの材料を揃えるだけで私の財布はすっからかんになってしまって…。本当は何かもう1つぐらいプレゼントを準備したかったんだけどなぁ。私の稼ぎではこれが精一杯。
だから、甘いものがあんまり得意じゃないリヴァイさんにも美味しいと喜んでもらえる様に、お砂糖控えめで甘過ぎず、それでいてリヴァイさんの好きな紅茶がぐいぐい進んじゃう様なバースデーケーキを作ることに私は尽力します!


「一世一代の大勝負…っ!」


と、気合十分でケーキ作りに取りかかった私だったけど、この3ヶ月間たくさんのケーキに関する本を読み漁って研究したおかげか、自分が思っていたよりも上手くできた…!と思う。少しだけデコレーションのクリームが緩いような気もするけど、これぐらいなら失敗のうちには入らない…!と思いたい。

最後に苺をたくさん乗せて仕上げ、崩してしまわないようにそーっとケーキを箱に詰める。ここで失敗したらリヴァイさんに何もプレゼントできなくなると思うと、緊張で手が震えてしまう。こんなに神経を使う作業って初めて!


「…よし…っ!ここまでは完璧…!」


震える手でなんとか無事にケーキを箱に詰め終え、ほっと胸を撫で下ろし椅子に腰かけた私は、ふと時計を見て慌てて立ちあがる。時計はもう昼の2時半を指していて…。ハンジさんとの待ち合わせの時間まであと30分しかないっ…!

急いで台所を片づけ、引きだしの奥にしまい込んでいたハンジさんから貰った調査兵団ジャケットに袖を通し身支度を整える。これを着るのも久しぶりだなぁとか、ベルトの巻き方が相変わらず難しいなぁとか、もっとしみじみしたかったけど今日はそんな時間はこれっぽっちもない。

リヴァイさんの誕生日を祝う会は、リヴァイさん本人には絶対にバレてはいけない最重要秘密事項!リヴァイさんにはバレない様に、開始予定時刻の6時までに会場である調査兵団の食堂で準備を進めないといけない。
だから私はハンジさんと相談して、いつかの様に調査兵団のふりをして潜入することに決めていた。本部内を私服でうろうろするよりは目立たないはずだから。

久しぶりの潜入にドキドキするけど、今回は私が潜入することはリヴァイさん以外の人はみんな知ってくれているからすごく心強い。たった1人、リヴァイさんにだけバレなければ良いんだから。この前はあっさり見つかっちゃったけど…。

(やればできるっ!きっとできるっ!)

気合いを入れ直すためにもう1度だけ1人えいえいおー!をしてから、リヴァイさんに贈るバースデーケーキを手に、私は雪の降り積もるなか調査兵団本部を目指して家を出た。



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