あなたに贈るハッピーバースデー@


その日は朝からしんしんと雪が降っていて、きっと昨日から降り続いていた雨が明け方頃に雪になったんだと思う。どんなに服を着こんでも足りないぐらい寒くて、でも心だけは1年の中で1番温かく感じる、そんな朝だった。


目が覚めた私は、まだ隣で眠るリヴァイさんの首元にギュっと抱きつき頬を擦り寄せる。こんな事をしたらリヴァイさんを起こしてしまうかもしれないけど、今日だけはどうしても我慢できなかった。
いつもよりもリヴァイさんが愛おしくって…。


「…何だ名前、朝からヤリてぇのか…?」
「…ち、違いますっ!」


ふいに聞こえたその声に、やっぱり起こしちゃったと後悔しながらも、寝起きでそんな事を言うリヴァイさんの言葉を私は慌てて否定した。
「そうか、残念だな。」と冗談なのか本気なのか分からない発言をしながらも、抱きしめ返してくれたリヴァイさんの腕の中はあたたかくて。1日中こうしていたいなぁ、なんてことを考えてしまう。
それに…早くあの言葉を伝えたいけど、事情があってそうできない私は必死に自分にストップをかける。


「リヴァイさん、おはようございます。」
「あぁ。今日は一段と寒ぃな。」



そうして何事もないように1日が始まり、2人で過ごす朝はあっという間に過ぎて行く。
いつもの様に私は仕事に向かうリヴァイさんをお見送り。


「リヴァイさん、兵団のマントだけじゃ寒くないですか?やっぱり私が編んだセーターも着込んでいった方が…。」
「いや、それはいい。これで充分だ。」


はっきりと断られました。そうですよね。仕事なのに私が編んだセーターなんて着て行ったら、兵士長としての威厳がなくなっちゃいますもんね。それは大問題です。


「雪で滑りやすいと思うので気を付けて行ってきて下さいね。」
「あぁ。どうした、名前。今日はやけに心配するじゃねぇか。何かあんのか?」


そう言って顔を覗き込んできたリヴァイさんに、私の心臓はドキッと大きく跳ねる。
まずい!このまま作戦がバレたら、せっかくの企画が台無しになっちゃう!


「い、いえっ!別に何でもないんですけど、雪降ってるしリヴァイさん大丈夫かなぁーと思って…。」
「別に雪が降るのは珍しいことじゃねぇだろ。」
「で、でも…っ!もしもリヴァイさんに何かあったらと思って…!」


必死に訴える私をその両手で抱き寄せて、「変な奴だな。」と言ってリヴァイさんは笑う。いきなり抱きしめられて、今度はさっきとは違う心臓のドキドキがうるさい。やっぱりいつもよりリヴァイさんを愛おしく感じた私は、その背中に手をまわしてぎゅーっと力強く抱きしめ返した。


「名前、お前の方こそ気を付けろよ。お前は雪道に出た瞬間に滑って頭を打つタイプなんだからな。」
「…そんなにマヌケじゃありません。」
「だと良いがな。」


拗ねたように言う私に、リヴァイさんは少し意地悪な表情でそんなことを言う。もう、リヴァイさんは一体どれだけ私をマヌケな奴だと思ってるんだろう。さすがにそこまでは抜けてないのに…。と思いたい…。


「とにかく、今日みたいな日は危ねぇから家で大人しくしてろ。」

その言葉に素直に返事をできない私の唇に軽いキスをしてから、リヴァイさんはドアを開け真っ白な景色の外に出る。私も一緒に外に出て、雪の降る中仕事に向かうリヴァイさんの背中をいつまでも見送った。
緑のマントに描かれた自由の翼が見えなくなるまで、いつまでも…。

(…リヴァイさんごめんなさい。今日だけは、家で大人しくはできません!)


何故なら、3か月前からリヴァイさんには内緒で取り組んできたある作戦の実行日だから…!
バレないように怪しまれないように、この3ヶ月間、私と調査兵団のみなさんとでそれはそれはヒソヒソと進めてきた。
それが成功するかどうかは今日にかかってる。
絶対にリヴァイさんに喜んでもらえる日にするんだから…!

寒空の下、気合いを入れるために「えいえいおー!」と拳を空に向かって高く上げてから私は家の中に戻った。

12月25日

今日は、私にとって何よりも大切なリヴァイさんの誕生日!


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