祈りの両手に閉じ込めた終焉
別マガ12月号のネタバレを含みます!ご注意下さい!「…っ…そんな…。」
その日、エルヴィンさんの病院から帰って来たリヴァイさんの話は、あまりにもショックな内容だった。巨人についてのことや、新しいリヴァイ班の編成についてのこと…。
「残念だが本当の話だ。…名前…俺が怖いか?」
「…どうしてですか…?」
リヴァイさんが何でそんな事を訊くのかが分からない。リヴァイさんを怖いだなんて1度も思ったことないのに…。
「決まってんだろ。俺は人殺しだ。それも今まで大量に殺してきた。」
そう言って目を伏せたリヴァイさんの瞳はあまりに悲しそうで、胸が張り裂けそうになる。自分のことを人殺しだなんて言わないで。それに…ハンジさんの言うように、まだ真相は分からない。
「…でも、まだ確証は無いんですよね?」
「ほぼ決まりだろ。」
リヴァイさんのその言葉に、気が付けば涙が私の頬を伝っていた。…どうして今まで色んな物を背負って戦ってきたリヴァイさんが、こんなに悲しい顔をしなくちゃいけないの?
目を背けたくなる様なあまりにも悲しい現実に、涙は止めどなく溢れてくる。
「どうしてお前が泣く。」
「…リヴァイさんが…泣かないから…。」
1番悲しいはずなのに、泣かないどころかリヴァイさんは新しく自分の班を編成して、もう前を見てる。それもまた、たくさんの事を自分1人で背負い込んで…。
私はリヴァイさんの右手を取って、涙で濡れる自分の頬にそっとその手をあてた。
私がよく知るその手はやっぱりあたたかくて。
「私はリヴァイさんのこの手が大好きです。」
「…人を殺した手だ。」
「例えそうでもこの気持ちは変わりません。いつもあたたかくて、大きくて、優しいこの手に…私は何度も守ってきてもらいました。」
それはきっと私だけじゃない。たくさんの人達がこの手に守られてきたはず。そして次は、104期のみんなを全力で守ろうとするんだろう。
「私はこの手を…リヴァイさんを愛しています。」
例えあなたが今まで殺してきたのが私達と同じ人間でも、この想いは揺るがない。揺らぐことはない。私は力をこめてリヴァイさんの手を強く、強く握り締めた。
何があっても揺るがないほどに、私の中のリヴァイさんの存在は大きなものだから。
何も言わずにただ私を見つめるリヴァイさんの唇に、私は初めて自分から唇を重ねた。
リヴァイさんはきっと、前の班の事があるから、今度は104期のみんなを自分の命に代えてでも守ろうとすると思う。私の知ってるリヴァイさんはそういう人だから。
でも、それじゃあリヴァイさんのことは誰が守ってくれるの…?
一緒に戦うことの出来ない無力な私には、両手を組んでただ祈ることしかできない。
だから私は祈ります。
残された私の生涯全ての幸福と引き換えで構いません。
どうかリヴァイさんを、1人で重過ぎる荷物を背負おうとしているリヴァイさんを、神様、どうかお護り下さい。