マーマレードに魔法をかけて 前編


「それにしてもリヴァイさんの得意な、あのシュッってなってビューングルグルってなるやつは本当に凄いですよねっ!!」
「名前…お前の言語力は3歳児のまま止まってるのか。立体機動装置だろ。」
「あっ!それです!ちょっと難しい名前の。」


そうそう立体機動装置だった!
あれを腰につけて何がどうなったらあんな動きができるんだろう…。本部に来てリヴァイさんの訓練する姿をみる度に、私の胸の中でその疑問は大きくなる一方だった。そして今日も、書類仕事をしに兵士長室にやって来た私は、さっき見た立体機動装置で飛びまわるリヴァイさんの姿を思い出し、興奮がまださめない。


「さっきので立体機動のことって分かるなんてさすがは夫婦だね。私には何のことかさっぱり分からなかったよ。」


さすがは夫婦…。ハンジさんが何気なく言ったその一言が嬉しくて、もう私は立体機動装置がなくても空中を飛びまわれそうです!


「おい、ハンジ。お前は何故ここに居る。研究はどうした。」
「だってせっかく名前ちゃんが来てるんだし…。って私すっごく良いこと思いついちゃったんだけど、名前ちゃんに立体機動体験させてあげれば!?」
「馬鹿か。寝言は寝て言え。」
「そっ…そんなことできるんですか!?」


あまりの驚きに勢いよく立ち上がった私を、リヴァイさんとハンジさんは少しびっくりした表情で見てる。でも、立体機動体験なんて聞いて立ちあがらない一般人はいないと思います!


「うん、できるよ。えっとね…。」


ハンジさんの話によると、何の訓練も受けてない私自身に立体機動装置を付けるのは無理だけど(リヴァイさん曰く、方向音痴のお前は狙った所にアンカーを刺すのも無理だろうな。とのこと)、ハンジさんやリヴァイさんのような立体機動のベテランさんに抱えてもらうことで、一緒に高い所に登ったり、ガスを吹かせた時の浮遊感を体験できるとのことだった。


「…す、凄い…!私…体験してみたいですっ!」
「…危ねぇだろ。」


瞳を輝かせて言う私とは正反対に、リヴァイさんは腕を組んで難しい顔。うーん。やっぱりダメなのかな…?でも、あの装置をつけてリヴァイさんが見てる世界を、少しでも良いから私も見てみたいな…。


「リヴァイは自信がないみたいだから、代わりに私が名前ちゃんに凄い景色を見せてあげるよ。」
「ええっ!?良いんですかハンジさん!!」
「もちろんだよ。2人で凄い景色を見よう!」
「おい待て。誰の自信がねぇだと。ハンジ、お前はクソでもしてろ。こいつの面倒は俺が見る。」


…ということは、リヴァイさんと一緒に凄い景色が見れる?それは…すっごく嬉しいっ!!
あまりの嬉しさに私は思わず両手でガッツポーズをした。リヴァイさんさっきまでは全然乗り気じゃなかったのに、自信がないって言われたのがそんなに嫌だったのかな…。


「良かったね、名前ちゃん!リヴァイが連れて行ってくれるって。立体機動デートだね!」
「はいっ!ハンジさん、素敵な提案を本当にありがとうございます!何かお礼しないと…。」
「あっ!お礼は名前ちゃんのキス1回で良いよ。」
「…え?」
「あぁ!?」


うーんとキスって…あのキスですよね?私とリヴァイさんが、朝起きた時と夜寝る前は絶対に欠かさずするあれですよね?うん、ハンジさん目閉じてるしきっとそう…。これは…一体どうすれば…。ハンジさんにお礼はしたいけど、リヴァイさん以外の人とキスなんて…。それに…そんなの不倫になっちゃう…。


「…えっと…その…」
「名前ちゃん早く早く!場所は唇で良いか…ぐえぇーっ!!」
「おいクソ野郎…。寝言は寝て言えって言ってんだろ。それとも何か?お前いっぺん死んでみるか?」
「リ、リヴァイさん!!」


ハンジさんが宙に浮いてます!立体機動装置ではなく、それはそれは乱暴に胸ぐらを掴んだリヴァイさんの腕っぷしによって!!


「じょ、冗談…だよ…。」
「…チッ。次はねぇと思え。おい名前、行くぞ。」
「あっ!はい!」


リヴァイさんはそう言うと、ハンジさんを半ば捨てるように降ろして私の腕を掴みズカズカと歩き出した。床にうずくまりゲホゲホと咳き込んでるハンジさん…。


「ハンジさん!!このお礼はまた別の形でさせてもらいますからぁー!!」


リヴァイさんに引っ張られながら叫んだ私の言葉はハンジさんに届いたのかどうかは分からない。リヴァイさんが乱暴なことしてごめんなさい!!あと、リヴァイさんが怒ってくれたことがちょっと嬉しかったと思って本当にごめんなさい!!


こうしてハンジさんという犠牲者1名を出して、私の嬉し恥ずかし立体機動装置初体験が始まったのでした。




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