意地悪なあなたとヤキモチ妬きな私


「リヴァイさんどこだろ…。」


私は今、調査兵団の本部にリヴァイさんのお弁当を届けに来ています。
信じられないことに、朝寝坊をしてしまってリヴァイさんが家を出るまでにお弁当が間に合わず…。
だからお昼までにはお弁当を持って行くって約束をしてたんだけど、リヴァイさんの姿が見当たらない。


(うーん兵士長室の方かな…。)


そう思って兵士長室に続く廊下を曲がると、何やら女の子達が集まっているのが見えた。
みんな笑顔できゃーきゃー言って嬉しそうな顔。何か良いことでもあったのかな。


(んっ!?あの女の子達の輪の真ん中に居るのは…)


リヴァイさんだ!やっと見つけた…けど、これはとっても話しかけにくい…。
よく見るとリヴァイさんは女の子数人に囲まれていて、書類の様なものを受け取っている最中だった。


「兵長報告書お願いします!」
「ああ。」



次々に書類を渡す女の子達。この書類の受け取りが終ったら話しかけてみよう。きっとすぐに済むだろうし。
そう思ってしばらく少し離れた所でその光景を見ていたけど、一向に女の子達がいなくならない。もう書類はとっくに渡し終えてるのに…。
どうしたんだろうと思った私は声が聞こえる距離まで近付いてみることにした。
でもそんな私の耳に聞こえて来たのは書類とは全く関係のない話だった!


「兵長今日は食堂でお昼食べないんですか!?みんなで食べましょうよ!」
「兵長!奥さんとは別れる予定ないんですか!?」
「どうしたら兵長の様な筋肉がつくんですか!?すごいですよね兵長の筋肉!」
「おい触んな。」


リヴァイさんへの質問の嵐。今、すごく恐ろしい質問が聞こえたような気が…別れる予定なんてありませんー!今朝寝坊したのだって、昨夜リヴァイさんがなかなか寝かせてくれなかったせいなんですー!

よく見ると筋肉がどうとか良いながら、1人の女の子がリヴァイさんの腕の辺りをベタベタと触ってる。


(リヴァイさんに…勝手に触らないで。)


胸の奥の方にもやもやとした黒い感情が渦を巻く。リヴァイさんも嫌なら、もっと手を振り払うぐらいして嫌がったら良いのに…。きっと可愛い女の子達に囲まれてまんざらでもないんだ。


(リヴァイさんのバカ!)


少し距離を詰めて近付いてみても、リヴァイさんは全く私に気付いてくれない…。
この状況にだんだん腹が立ってきた私は、もうお弁当を渡さずに帰ることに決めた。


(リヴァイさんはこの女の子達にお弁当を作ってもらって下さい!それに今夜は別々に寝ます!)


心の中で叫び、来た道を引き返そうと歩き出した時、


「名前。」


リヴァイさんが私を呼ぶ声がした。びっくりして振り向くとリヴァイさんは真っ直ぐに私の方に歩いてくる。…今さら気付いたってもう遅いんですからね。


「…何ですか?」
「弁当だろ。悪かったな。」
「お弁当は…ありません。」
「あ?じゃあお前が手に持ってる物は何だ?」


その言葉にはっとして慌てて手に持っていた紙袋を背中で隠した。リヴァイさんを囲んでいた女の子達は「あ…あの人奥さんだよ。」と嫌そうな顔をしている。


「リヴァイさんは…あの女の子達にお弁当作ってもらったら良いじゃないですか…。」
「拗ねてんのか名前。」
「拗ねてなんて…いません!」


そう言って顔を上げると、リヴァイさんはいきなり私を抱きしめた。突然の行動にリヴァイさんの肩越しに見える女の子達同様に、私も言葉を失った。


「名前。」
「ちょっ、リヴァイさ…んっ…!」


リヴァイさんの唇によって遮られた私の言葉。いきなりのキスに私は頭の中が真っ白になりそうだった。


(みんな見てるのに!)


そんな私の気持ちはお構いなしに、リヴァイさんの舌は私の唇をこじ開け簡単に舌を絡め取られてしまう。


「…っ……んっ……!」


やめてと言いたくて胸の辺りを叩いてみても全く効果は無く、逃げようにも私をしっかりと抱きしめるリヴァイさんの両腕がそれを許してはくれない。
成す術もなくリヴァイさんの舌や唇にされるがままでいる私。その舌遣いにだんだん頭がぼーっとして何も考えられなくなってきたところで、リヴァイさんはやっと私を解放した。


「…リヴァイさん…どうして?」
「名前、好きだ。」


肩で息をしながら問いかける私の言葉には答えずに、リヴァイさんはまた私を抱きしめた。本当にどうしちゃったんだろう。さっきの女の子達は私達の姿を見ていられないと言わんばかりに、青い顔をして全員どこかに行ってしまった。


「…もう。リヴァイさんのバカ。」
「お前の妬く顔が見たかった。」
「えっ!?それじゃあ最初からわざと…?」
「当たり前だ。それにあいつらも、もう寄って来ねぇだろ。」


(最初から気付いてたんだ!)


まるで心を見透かされたみたいですごく恥ずかしくなってきた。私を妬かせることと、女の子達を追い払うこと…全てはリヴァイさんの計算のうちだった訳で…。


「恥ずかしい…。リヴァイさん、本当はお弁当あります。」
「ああ。見てりゃ分かる。…それより、妬いて拗ねるお前も悪くねぇな名前。」


顔を上げると、そんなことを意地悪く少し口角を上げながら言うリヴァイさんがいて、そんな表情にもドキドキしてしまう私は、一生この人には勝てないと思った。



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