紳士の冗談は笑えない!?


「エルヴィンさんこんにちは。」
「久しぶりだね名前さん。」


リヴァイさんのお弁当を届けるために調査兵団の本部に潜入したあの日から2週間ほど経った今日、私は大事な話があるとエルヴィンさんに呼び出され、本部にあるエルヴィンさんの部屋を訪れていた。
何故か家を出る時から今に至るまで、私の隣りにはずーっとリヴァイさんがいます。


「リヴァイさん、無事にエルヴィンさんの所にたどり着けましたし、私はもう大丈夫ですよ?お仕事に戻った…」
「まだ終わってねぇ。こいつが名前に何の用なのか俺には聞く権利がある。」


私の言葉を遮り怖い顔でそんな事を言うリヴァイさん。そんなに警戒しなくても大丈夫なのに…。変なことや無茶なことは言われないと思います。だってエルヴィンさんはリヴァイさんと違って紳士だから!


「まぁ2人とも座ってくれ。」


穏やかな笑顔のエルヴィンさん。うん間違いない!エルヴィンさんは紳士です!笑顔が素敵!

ソファに座ってからも、もちろん私の隣にはリヴァイさんが。お仕事大丈夫なのかな…?


「それで名前に何の用だ。」
「ああ。その事だが、名前さんこれからもこの前の様に、たまに書類関係の仕事を手伝ってもらえないかな?もちろんタダ働きではなく…」
「ダメだ。」


私が口を開くよりも早くリヴァイさんは却下した。どうしてリヴァイさんが答えるんですか!?エルヴィンさんは私に聞いてくれてるのに…。


「俺は名前さんに聞いているんだが。」
「ダメなものはダ…」
「私、やりたいです!」


私の言葉に嬉しそうな顔のエルヴィンさんとは正反対に突き刺さる様なリヴァイさんの視線が痛い…。


「名前、お前花屋はどうする気だ。」
「週3回の勤務だから大丈夫です!それに、お家のこともちゃんとやりますから。お願いしますリヴァイさん!」


私はリヴァイさんの手を取って必死にお願いした。だって調査兵団の本部でお仕事を手伝うと言うことは、ハンジさんやエレン達にも会えるし、それに…またお仕事中のリヴァイさんの姿が見れるということなんですよ!もうそれだけで、お給料はいらないぐらいに幸せです。


「…ちっ。勝手にしろ。その代わり名前は俺の監視下で仕事をさせるからな。」
「ああ。それで構わない。ありがとう名前さん。」
「いえそんな…。よろしくお願いします。」
「ああ、よろしく。」


そう言ってエルヴィンさんは私に右手を差し出した。調査兵団の団長さんと握手をするなんて、まるで私も調査兵団の一員になった様な気分で嬉しいな。


「…おいエルヴィン…。」
「名前さん、今日は邪魔が入ってしまったことだしまたゆっくり話をしよう。今度は2人だけで。」


さっきまでの優しい表情とは違い少し意地悪く微笑むエルヴィンさんは、握っていた私の右手の甲にちゅっとキスを落とした。


(こ、これは一体どういう状況なんでしょうか…!?紳士の冗談はこういう感じなのですか!?)


突然のことに言葉も出ず、唖然としているとガーンっと机を蹴り飛ばす大きな音が部屋に響いた。


「おいエルヴィン…今名前に何しやがった…。いくらお前でも許さねぇ。」
「ああ、リヴァイ居たのか。ちょっとした挨拶だよ。」
「てめぇ…!行くぞ名前!」


険しい表情のリヴァイさんは立ち上がり私の手を力強く引いて、エルヴィンさんの部屋を足早に出た。掴まれている腕が少し痛い。


「あいつ…許さねぇ。」
「リヴァイさん。腕…痛いです。」


私の言葉に立ち止まったリヴァイさんは、何を思ったのか突然私を廊下の壁に押し付けた。


「名前、お前もお前だ。あんな時はすぐに手を振り払え。隙を見せんな。」
「…そんなぁ…。」
「手ぇ貸せ。」


そう言って、リヴァイさんはさっきエルヴィンさんにキスされた私の右手を掴み自分の口元に運んだ。


「…え?リヴァイさん?」


私の嫌な予感は的中し、リヴァイさんは私の手に舌を這わせた。手の甲から指先までエルヴィンさんに触れられたところ全てを、その熱い舌で舐められる。


「んっ…リヴァイさん…待って。」
「ただの消毒だ。」


そう言う割には、甘噛みしたり軽く吸ったり全然ただの消毒とは思えない。後ろは壁で逃げ場もなく、手や指先に走る甘い感覚に口から漏れる嬌声を我慢することもできない。


「ん…っ…あ…リヴァイさん…ダメ…。」
「こんなただの消毒で根をあげてたら、お前今日の躾は耐えられねぇかもな。」
「…え?」
「先に言っておくが、今日は待っては一切通用しないと思え。泣いても止めねぇからな。」


その日の夜、リヴァイさんの宣言通りにとんでもない目に合った私は、紳士の冗談は危険という事と、ヤキモチが原因で行われるリヴァイさんの躾は普段の数倍恐ろしいという痛いほどの教訓を得た。


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