それは悪意じゃなくて善意です!
「すみません!俺っ…邪魔するつもりじゃ…!」
「おいエレン。お前ここに何しに来た?」
赤い顔で慌てふためくエレンと、顔だけじゃなく声まで不機嫌なリヴァイさん。でも、ドアを開けたら自分の上司のキスシーンなんて、誰でも信じられないぐらいびっくりするよね…。
(エレン!本当にごめんなさい!)
私はもうエレンに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。リヴァイさんは全く悪びれる様子も無いけど。
「ハンジさんからお茶を持って行く様に命じられたんですっ!兵長!本当にすみませんでしたっ!」
「あのクソ眼鏡…。わざとやりやがったな。」
そう言ってリヴァイさんはさっきよりも怖い顔をした。…わざとって!?言いがかりですよ!ハンジさんの善意だと私は思います!だって誰も職場でまさかキスしてるなんて思わないと思います!だから悪いのはエレンでもハンジさんでもなく、私達です!
「何だ名前、言いたいことがあるのか?」
「…ありません。」
…今は怖くてとてもリヴァイさんには言えない…。またリヴァイさんの機嫌が直った頃に諭してみよう。
「エレン、それを拾ったらさっさと行け。」
「は、はいっ!…痛っ!」
しばらくリヴァイさんの顔色を伺っていた私だったけど、その声にびっくりしてエレンの方を見ると、割れたティーカップで切ったのかエレンの指先からは赤い血が流れていた。
「エレン!大丈夫っ!?」
「エレン…だと…。」
リヴァイさんが何か言った気がしたけど、今はそれどころじゃない!
すぐにエレンに駆け寄った私は、ポケットから出したハンカチで血が出ているエレンの人差し指を押さえた。
「名前さん!ハンカチが汚れます!」
「名前さん…だと…。」
「いいの!そんな事より手痛いよね?ごめんね…私達のせいで…。」
私とリヴァイさんがこんなところでキスなんかしてたから、エレンをびっくりさせちゃった。私は申し訳ない気持ちでいっぱいで、エレンの指をハンカチで押えていた。
でも次の瞬間、信じられないような事が目の前で起きた。
「…え?」
突然、ハンカチに付いていた血が消えた。
何が起こったのか分からず、指からハンカチを離してじっくり見てみても、さっきまで付いていた血のシミが綺麗に一つもない…。
驚く私は、さらにエレンの指を見て言葉を失った。
(傷が…消えてるっ!)
さっきまでは確かに傷があったし、エレンも痛がってた。この短時間に何が起きたの…?生まれて初めて目にする信じられないような出来事に、怖々とエレンの顔を見ると、エレンはばつの悪そうな顔で言った。
「すみません名前さん。気持ち悪いですよね…。」
その時、私の頭にはリヴァイさんが前に家で話してくれた巨人化できる男の子のことが頭に浮かんだ。確か歯がすぐ生えたり巨人の様に再生能力があって…今年から調査兵団に入ったというその男の子。それは…やっぱり…。
「エレン…あなたもしかして…!」