アネモネの咲く頃に | ナノ


  03


エルヴィンからの話のあと、私はリヴァイに部屋や食堂などを案内して回ることになった。


(いきなり2人っきりにさせないでよ!エルヴィンの馬鹿!ミケとハンジもついて来てよ!)


この人さっきからずっと睨んでくるんですけど…。
なんだか無性に泣きたくなってきた。

(こういう時は分隊長スマイルで頑張れ私!)


「食堂はここを使ってね。共用だからエルヴィンも新兵もみんなここで食べるの。」


分隊長スマイルを顔に貼り付けて、私は微笑みながらリヴァイに言う。


「気持ち悪りぃ。」
「何が?共用だから?」
「お前の仮面みたいなツラがだ。」


リヴァイは吐き捨てるようにそう言った。


(さっきからうぜぇとか気持ち悪ぃとか何なのこいつ!)


「ごめんなさいね。こういう顔なんです。」
「…チッ。」


でも、初めて人に仮面みたいだなんて言われた。作り笑顔は上手い方だと思ってたんだけどな。見抜かれたことが腹立たしいような少し嬉しいような…。



食堂の次は、リヴァイがこれから使う部屋を案内することにした。


「エルヴィンがここを使う様にだって。」


そこは随分前から空いている部屋だった。きっと埃とかけっこうひどいんだろうなぁ。今すぐに使える状態なのかな?


そう思い部屋に入ろうとドアノブに手をかけようとした時…


「触んな。」
「えっ?」
「俺の部屋だ、勝手に触んな。汚ねぇ。」


私を睨みつけるリヴァイ。その眉間には深い皺が刻まれている。


(私はばい菌ってか!この潔癖男!)


さすがにこれには腹が立った私は言い返してやることにした。


「汚くてすみませんね、潔癖症さん。」
「…できんじゃねぇか、そういうツラも。」


そう言ってリヴァイは部屋の中にさっさと消えて行った。


(そういうツラって…。)


やっぱり心を見透かされている感じがして、今度は少し不快だった。エルヴィンが連れてきたムカつく男。それが私の初めてリヴァイに会った日の率直な感想だった。


これから上手くやって行けるか不安で堪らない。



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