アネモネの咲く頃に | ナノ


  01


「名前分隊長!右から10m級が1体!左から15m級が2体です!」
「了解!あなたは10m級をやって!残りの班員はハンジ班の負傷者の介抱を!左は私に任せて!」
「名前分隊長!危険です!俺も左を…」
「大丈夫!任せてってば!」


近くの建物にアンカーを刺し勢いよくガスを吹かせると、何とも言えない浮遊感に身体を包まれる。
両手の刃を握り直し巨人のうなじを目がけて思い切り振りかざすと、刃が肉に食い込む感触と同時に巨人が倒れ込む。


「あと1体!」


そのまま負傷した兵士に向かって歩いていたもう1体の巨人のうなじ付近にアンカーを刺し、ガスを吹かせながら今度は下からすくい上げる様にうなじを削ぐ。


「これでOKっと。ハンジ!生きてる!?」
「ああ。何とかね。それにしても名前の立体機動は相変わらず凄いね。どうしたらあんなに素早く動けるの?」
「今はそんな呑気なこと言ってる場合じゃないでしょ。さっさと撤退するよ!」


左腕を負傷してしまっているハンジを荷馬車に乗せながら少し大きな声で言う。
もう撤退命令は出ているんだから、こんなところでのんびりしてたらまた巨人に囲まれてしまう。


「みんな無事!?撤退するよ!」
素早く馬に乗り班員たちに向かって叫ぶ。


「名前分隊長!感動しました!名前分隊長が巨人を舞う様に倒す姿最高にかっこよかったです!」
「ありがとう。でも舞う様にだなんてそんなかっこいいもんじゃないよ。ただガムシャラに戦ってただけ。」


班員に笑顔を向け、私は後ろを振り返った。


(もっと戦っていたかったな。)


巨人と戦っている間は何も考えなくて済む。
過去の記憶も、染み付いている孤独感をも忘れることができるから…。


そんなことを考えながら私は前を向いて馬を走らせるスピードを上げた。





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