アネモネの咲く頃に | ナノ


  33


その日の夜はなかなか寝付けなかった。
今日1日の出来事を思い返してみると、本当に慌ただしかったなと思う。


朝、目が覚めたら隣で眠るリヴァイがいて…。


(あっ!そう言えば…)


昨日、飲み会の途中で寝てしまったことをハンジに謝るの忘れてた。それ以外の伝えたいことで、頭の中がいっぱいだった。明日こそちゃんとハンジとミケに謝ろう。


それから…リヴァイと街に出かけるのがデートみたいって舞い上がってたら、いきなり知らない男達に殴られるわ襲われそうになるわ…。

でも、助けに来てくれた時のリヴァイはすごくかっこ良かったなぁ…なんて。
抱きしめてくれた時の腕の力強さとか、あたたかい体温とか…。色々あったけど、思い出すのはリヴァイのことばかり。


窓の外では、まだ雨が降り続いていた。しとしとと聞こえてくるその雨の音に、耳を預けながらゆっくりまぶたを閉じる。

まぶたを閉じても頭に思い浮かぶのはリヴァイのことで、「名前。」って私の名前を呼ぶリヴァイの声が頭に響くようだった。


「…好き…。」


布団を頭まで被って声に出してみたら、それだけで体温が上昇した気がした。
そのたった2文字を、私は伝えられる日が来るのかな。


リヴァイが呆れるくらいに好きって何回も大きな声で言いたい気持ちもあるけど、今の関係が壊れるのも怖い。…やっぱり私は臆病だ。


(明日、どんな顔でリヴァイに会おう…。)


日を追うごとに積もるリヴァイへの想いを胸に、私は眠りに就いた。



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