30
「そんな事があって私は訓練兵を志願して、今に至るんだけど…。その事があってからずっと人を信じるのが怖かった。だから今まで自分の本心は隠して人と一定の距離を保ってたの。」
リヴァイは私の話を黙って聞いてくれている。ずっとトラウマになっていた過去の出来事。でも今日、私はそれを克服できた気がする。
「でもね…今日はリヴァイが助けに来てくれた。12歳の時の私には助けに来てくれる人なんて居なかったから。だから、怖い思いもしたし、殴られたり散々だったけど…今、すごく嬉しい…。」
今の私には助けに来てくれる仲間がいる。それに失いたくない場所も失いたくない人達も…。もうあの頃の私とは違うんだって分かった。すごく大事なことに気づけたの。
「だからリヴァイ…本当にありがとう。」
「別に俺は何もしてねぇ。」
そう呟くリヴァイの手を取ると、リヴァイは少しだけ驚いた目を私に向けた。
「そんな事ない。リヴァイが居なかったら私はこんな気持ちにはなれなかった。また自分以外の誰かを信じたいなんて思えなかったよ。」
「名前が勝手に自分で乗り越えただけだ。」
頑固だなぁ。でも、私の感謝の気持ちはちゃんと伝わってるよね?私はリヴァイの手をぎゅっと握り直した。
「リヴァイと出会えて本当に良かった。」
嘘も偽りもない私の心からの本音。出会った頃は自分にとってリヴァイがこんなに大きな存在になるなんて思ってもみなかった。何が起こるか分からないものだなぁ。
今、格好はボロボロの私だけど、心の中はすごく温かい。
「名前。」
リヴァイは私の頬に手を添えて、親指で私の唇をなぞった。その仕草に早くなる心臓の音。
「…リヴァイ?」
唇をなぞる指が止まり、近づいてくるリヴァイの顔。
(え…?)
あまりに突然の事に私はぎゅっと目を閉じた。