アネモネの咲く頃に | ナノ


  25


私が思い出した大事なこと。それは…


「今日ね、ハンジの誕生日なの。プレゼント買いに行かなきゃって思ってたんだけど、朝から色々びっくりし過ぎて忘れてた。」
「あの奇行種にも誕生日とかあったんだな。」
「奇行種ってハンジのこと!?」
「他に誰が居んだよ。」


…人のこと奇行種とか言う人初めて見た。でも、ハンジにぴったりの言葉かもしれないと思ってしまった自分が居る…。ハンジごめん。

入院している時からずっと、ハンジの誕生日までには退院してちゃんとお祝いしたいって思ってた。訓練兵時代から苦楽を共にしてきた私の大事な仲間で友人だから。


「あっ!」
「何だ。さっきからうるせぇな。」


ハンジの誕生日を思い出した私は同時にすごーく良いことを思い付いた。


「ねぇリヴァイも一緒に街に行かない?迷惑かけたお詫びに美味しい物でもごちそうするよ。」
「…めんどくせぇ。」


ちぇっ。やっぱりそうきたか。2人で街だなんてデートみたいで良いなって思ったんだけどな。


「じゃあ良いですー。お詫びはまた今度するとして…ナナバでも誘ってみようかな。去年もナナバに付き合ってもらったし…。」
「………。」


顎に手を当ててぶつぶつと独り言を呟いていると、すぐ隣からの視線に気が付いた。


「何?そんなに見て。」
「…1人で行くんじゃねぇのか。」
「うん!だってハンジの好みって分かるようでよく分からないんだもん。」


巨人の話ばかりのハンジの趣味は何年経ってもよく分からない。去年もナナバとゲルガーと3人で、あれでもないこれでもないと言いながら選んだのを思い出す。


「…ちっ。さっさと準備しろ。」
「えっ?一緒に来てくれるの?」
「……そう言ってんだろうが。」


何だかよく分からないけどリヴァイは気が変わったみたいで、一緒に来てくれるらしい。
急にどうしたんだろ。…でも、私は素直に嬉しかった。


「待って!まだお店も開いてないし、それに昨日帰って来てそのままだからお風呂に入ったりもしたい。だからお昼から行こうよ。」
「仕方ねぇな。」


こうして私は初めてリヴァイと一緒に出かける約束をした。


「じゃあまた後でね。」
「ああ。」


そう言葉を交わしてリヴァイが部屋から出て行ったあと、私は嬉しくなって左腕でガッツポーズをした。


(やった!リヴァイとデートだ!)


「何やってんだ名前。」
「何で居るの!?さっき出て行ったじゃない!」
「忘れもん取りにきただけだ。」
「ノックしてよ!わ、私は朝の体操をしてたの!身体が鈍るから!」
「怪我治ってねぇんだから大人しくしとけ。」
「…はい。」


それを言われると何も言い返せない。
私の部屋に忘れたというジャケットを手に持って出て行ったリヴァイ。女子の部屋を何だと思ってるのよ!リヴァイのバカ!

少し腹が立ちながらも、お昼からの約束に私は心を踊らせていた。


(何着て行こうかな…。)


あれ?そういえばリヴァイもう怒ってないみたいだったけど…私の記憶が無い間に仲直りしたのかな。
まぁ良いや。昨日と違って今日は何だか…凄く楽しい。



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