アネモネの咲く頃に | ナノ


  24


朝、目覚めると隣にはリヴァイ。2人共服はちゃんと着ている。でも「激しかったのにな。」という意味深な発言…。
もう訳が分からないっ!
まさか脱がせてもう1回着せたとか!?いやいや、右腕を骨折している私の着替えはかなり大変だからそれはないだろう…。
まさか!服を着たまま致したとか!?それなら全部の辻褄が合う、合ってしまう…。


リヴァイの予想外過ぎる発言に頭を抱えてる私をよそに、当の本人は隣で伸びとかしちゃって涼しい顔だ。
リヴァイにとってはこういうお酒飲んで朝起きたら…みたいなの慣れっこなのかなぁー。そうじゃないとこの余裕はないよね。
今まで一体どんな女の人と付き合ってきたんだろう。さっきから頭を巡る余計な思考のせいで、だんだんモヤモヤした気持ちになってきた。


「なに人の顔ジロジロ見てんだよ。」

知らないうちにリヴァイを見つめていたらしく、気づいたら頭を小突かれていた。


「な、何でもないっ!…ことはない。」
「あ?どっちだよ。」


意味不明な私の発言に呆れ顔のリヴァイ。
このままこの事をうやむやにしてはいけないと思った私は、覚悟を決めてリヴァイの前に正座した。


「リヴァイさん。お話があります。」
「さんって何だ。気持ち悪りぃな。」


怪訝な顔で言われたって負けてられない。こういう事は白黒はっきりしとかないと!


「…あのね、私とリヴァイは分隊長と兵士長でしょ。だから…もし何か間違いがあったんなら、きちんとケジメをつけないといけないと思う訳です…。」
「間違いって何のことだ?」


「意味が分からん。」とでも言いたそうなリヴァイの表情。もう察してよバカ!どうして私の口から言わないといけないのよ!経験豊富そうなくせにーっ!


「だ、だから…。その…。」
「なんだよ。さっさと言え。」
「だから…わ、私達…一線越えちゃったんでしょっ!?」


あまりの恥ずかしさに目をぎゅっと閉じて、スカートの裾を握りしめた。
もうやだ何でこんな恥ずかしい目にっ!

そんな私の耳に入ってきたのはリヴァイの肯定の言葉ではなく、クッと笑う低い声だった。


「え…?リヴァイ笑ってる?」
「これが笑わずにいられるか。名前、お前は昨日、俺が寝てるお前に手ぇ出したと思ってたのか。…逆だバカ。」
「逆って何!?」


私がリヴァイを襲ったとでも言いたいの?
笑ってないで早く教えてよ!


「昨日お前を酒場からここまで連れてきて、自分の部屋に戻ろうとしたらお前が帰らないでって泣き喚いたんだろうが。」
「…え?嘘…だよね?」
「嘘じゃねぇ。挙句の果てに抱き付いて離れねぇから俺もここで寝てやった。感謝しやがれ。」
「…全く覚えてない…。」
「だろうな。あんなの覚えてたら正気じゃいられねぇだろ。」


そんなに酷かったのか…昨日の私。もう年内は絶対にお酒を飲まないと私は誓った。
まさかリヴァイの前でそんな醜態を晒してたなんて…最悪以外の言葉が出てこない。
しかも抱き付いたって何!?記憶無くしてる間の私、積極的過ぎでしょ!


「それに寝てる名前に手ぇ出しても面白くねぇだろ。」
「え?何か言った?」
「別に何でもねぇ。」


あまりの恥ずかしさに両手で顔を覆って悶絶してる間に、リヴァイが何か呟いたのを聞き逃してしまった。
何て言ったんだろ。


「もう私最悪だね…。」
「俺だから良かったものの、他の男相手だったらお前間違いなく食われてたぞ。気を付けろ馬鹿名前。」
「…はい。すみませんでした。」


リヴァイが意外と常識人で良かった。
自分の身の潔白も証明されたし一件落着…なのかな。


「後でハンジとミケにも謝りに行ってこよう。…あっ!」
「今度は何だ。」
「ハンジと言えば…。」


目覚めてからの衝撃的な出来事の連続ですっかり忘れてしまっていた、大好きなハンジに関する大事なことを私は思い出した。



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