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「それじゃあ、リヴァイの兵士長就任と名前の退院を祝してかんぱーい!」
ミケ、ハンジ、リヴァイそして私の4人は、その夜予定通りに酒場でテーブルを囲んでいた。エルヴィンはもう少しだけ遅れて来るらしい。
リヴァイは相変わらず私とは目も合わせようとしない…。
(こうなったら飲んで嫌なことは忘れてやる!)
そう決めた私は、グラスに注がれたお酒をごくごくと勢いよく飲み始めた。
「おかわりっ!」
「ちょっと名前ペース早いんじゃない?もう少しゆっくり飲みなよ。」
「大丈夫っ!それに今日は飲みたい気分なの!」
「えー?ミケとリヴァイも何か言ってやってよ。」
「珍しいな。何かあったのか名前?」
「…勝手に飲ませとけ。」
なーにが勝手に飲ませとけよ!あんたのせいでしょうが。
もうリヴァイなんて知らない!
「あとで後悔しても私は知らないからね、名前。」
「うん大丈夫!私そんなにお酒に弱くないし。」
今は飲んで嫌なことを忘れたい。せっかく最近はリヴァイのことがちょっとずつ分かるようになってきたと思ってたのに。これじゃあ振り出しに戻った気分だ。
でもこのままずっとリヴァイとこんな感じだったら嫌だな。あんな態度を取られても、リヴァイを好きな気持ちはやっぱり変わらないわけだし。
悶々とリヴァイのことを考えていると、ハンジが少し大きな声を上げた。
「あっ!エルヴィン!」
「遅くなってすまなかったな。」
思っていたよりも早くエルヴィンは酒場に現れた。
「もう仕事全部終わったの?」
「それが急に仕事が増えてしまってね。悪いが、もう少ししたらまたすぐ本部に戻るつもりだ。」
「そっかぁ。顔だけ出しに来てくれたんだね。ありがとうエルヴィン。」
「名前、顔が赤いが、あんまり飲みすぎないようにな。」
そう言ってエルヴィンはまた私の頭を撫でてくれた。…心地良くって少し眠い。いつの間にか少しお酒に弱くなっちゃったのかな。
でも、寝てしまう前に私はどうしてもリヴァイに昼間のことを聞いておきたかった。リヴァイの隣に座っていたミケに席を代わってもらい、ついに私は行動を起こす。
「ねぇリヴァイ。…何怒ってるの?」
「別に怒ってねぇ。」
ふーん。その割には眉間の皺がいつもより深いですけどね。
「思ってることあったらちゃんと言ってよ。気になるでしょ。」
「別に何も思ってねぇ。」
リヴァイの嘘つき。じゃあ何でそんな態度なのよ。明らかにいつもと違うじゃない。
…でも、話したくないんだったら無理に聞かない方が良いかな。
リヴァイの横顔を見ながら考えていると、さっき席についたばかりのエルヴィンが立ち上がり言った。
「名前、リヴァイ、悪いが俺は仕事に戻るよ。」
「えっ、もう?でもお仕事だもんね。」
「ああ。すまないな。」
「……私もエルヴィンと一緒に帰る。」
「えっ?そうなの名前?まぁ退院したばっかりだしその方が良いかもね。あんまり飲み過ぎたら良くないし。」
「じゃあ一緒に帰るか、名前。」
「…うん。」
私がここに居てもリヴァイが楽しく飲めないだろうから、もう帰って寝ようと思った。
眠いし…それにやっぱりちょっと気まずい。
お酒が入って少しだるい体でゆっくりと立ち上がり、歩き出そうとしたその時、リヴァイが突然私の腕を掴んだ。
「…何?どうしたのリヴァイ?」
「………。」
何も言わず、こっちも見てないのにリヴァイの手はしっかりと私の腕を掴んでいた。
訳が分からずみんなの方を見ると、ミケもハンジもエルヴィンも口元にうっすらと笑みを浮かべている。
「…じゃあ名前のことはリヴァイに任せるとしよう。」
「えっ!?エルヴィン?」
「それじゃあみんな、またな。」
そう言ってエルヴィンは足早に帰って行ってしまった。結局、リヴァイはエルヴィンの姿が見えなくなるまで私の腕を掴んでいて。
「もうどうしたのリヴァイ?エルヴィン帰っちゃったじゃない。」
「エルヴィンエルヴィンうるせぇんだよお前は。」
「何それ!?そんなこと言われても私エルヴィン大好きなんだから仕方ないでしょ。」
「そうかよ。残念だったな、大好きなエルヴィンと一緒に帰れなくて。」
本当に今日のリヴァイの言動は訳が分からない。腹が立った私は、ささやかな復讐としてリヴァイのお酒を横取りすることにした。
リヴァイのグラスをガッと掴んで一気に喉に流し込む。
「…っ…何これ!?」
でもそのお酒は私が今まで飲んだことがないくらいにアルコールがきつくて、喉が焼けそうになった。
「馬鹿かお前は。」
横取りに失敗し馬鹿と言われ、挙句に物凄い睡魔に襲われた私は机に突っ伏した。
瞼が重くて開かないし、何かもうどうでもいいや。
「おい、ここで寝んなよ名前」
「…エルヴィンのことは…お父さんみたいで…大好きなの。」
「…親父…?」
「…そう。」
…もうダメだ。眠い。
「それをさっさと言え。」ってリヴァイの声が聞こえた気がした後、私はとうとう眠りに落ちてしまった。